March 12, 2020 Vol. 382 No. 11
アスピリンと肝細胞癌および肝関連死との関連
Association of Aspirin with Hepatocellular Carcinoma and Liver-Related Mortality
T.G. Simon and Others
B 型または C 型の慢性肝炎患者における低用量アスピリン(160 mg 以下)の,肝細胞癌の発生,肝関連死,消化管出血に対する長期的な影響について,より多くの情報が必要である.
スウェーデンの全国規模の登録を用いて,2005~15 年に B 型または C 型の慢性肝炎の診断を受けた,アスピリンの使用歴のないすべての成人患者(50,275 例)を特定した.低用量アスピリンの服用を開始していた患者(14,205 例)を,90 回以上のアスピリン連続投与の最初に調剤された処方箋をもとに特定した.傾向スコアを作成し,治療に関する確率の逆数による重み付けを適用して,群間でベースライン特性のバランスを調整した.Cox 比例ハザード回帰モデルを用いて,競合イベントを考慮して肝細胞癌と肝関連死のリスクを推定した.
追跡期間中央値 7.9 年の時点で,肝細胞癌の推定累積発生率は,アスピリン使用者で 4.0%,非使用者で 8.3%であった(差 -4.3 パーセントポイント,95%信頼区間 [CI] -5.0~-3.6,補正ハザード比 0.69,95% CI 0.62~0.76).この逆相関は使用期間に依存すると考えられ,短期間(3 ヵ月以上 1 年未満)の使用に対する補正ハザード比は,使用期間が 1 年以上 3 年未満で 0.90(95% CI 0.76~1.06),3 年以上 5 年未満で 0.66(95% CI 0.56~0.78),5 年以上で 0.57(95% CI 0.42~0.70)であった.10 年肝関連死亡率は,アスピリン使用者で 11.0%,非使用者で 17.9%であった(差 -6.9 パーセントポイント [95% CI -8.1~-5.7],補正ハザード比 0.73 [95% CI 0.67~0.81]).しかし,消化管出血の 10 年リスクには,アスピリン使用者と非使用者とのあいだで有意差は認められなかった(それぞれ 7.8%と 6.9%,差 0.9 パーセントポイント,95% CI -0.6~2.4).
スウェーデンのウイルス性慢性肝炎患者の全国規模の研究で,低用量アスピリンを使用した場合,使用しなかった場合と比較して肝細胞癌のリスクが有意に低いことと肝関連死亡率が低いことに関連し,消化管出血のリスクが有意に高いことには関連しなかった.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.)