米国の入院患者における多剤耐性菌感染症,2012~17 年
Multidrug-Resistant Bacterial Infections in U.S. Hospitalized Patients, 2012–2017
J.A. Jernigan and Others
医療に関連することの多い多剤耐性(MDR)菌は,大きな健康負担をもたらす.公衆衛生活動に情報を提供するために,この病原菌群に関する最新の全国推計が必要である.
米国の 890 の病院から成るコホートに 2012~17 年に入院した患者のデータを用いて,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA),バンコマイシン耐性腸球菌(VRE),基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生を示唆する腸内細菌科細菌の広域セファロスポリン耐性,カルバペネム耐性腸内細菌科細菌,カルバペネム耐性アシネトバクター属菌,MDR 緑膿菌による院内感染と市中感染の両方について,米国における症例数を推計した.
本研究の病院コホートの入院件数は 4,160 万件であった(米国の年間入院件数の 20%超に相当).全体的な臨床培養実施率は 1,000 患者日あたり 292 件であり,研究期間中は一定であった.2017 年に,入院患者における前述の病原菌による感染は 622,390 件(95%信頼区間 [CI] 579,125~665,655)と推定された.これらの感染のうち 517,818 件(83%)は市中で発生し,104,572 件(17%)は院内で発生していた.MRSA 感染症と ESBL 感染症が大部分を占めた(それぞれ 52%と 32%).2012~17 年に発生率が低下した感染症は,MRSA 感染症(入院 10,000 件あたり 114.18 件から 93.68 件),VRE 感染症(入院 10,000 件あたり 24.15 件から 15.76 件),カルバペネム耐性アシネトバクター属菌感染症(入院 10,000 件あたり 3.33 件から 2.47 件),MDR 緑膿菌感染症(入院 10,000 件あたり 13.10 件から 9.43 件)であり,低下率は -20.5%~-39.2%の範囲であった.カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症の発生率に有意な変化は認められなかった(入院 10,000 件あたり 3.36 件から 3.79 件).ESBL 感染症の発生率は 53.3%上昇し(入院 10,000 件あたり 37.55 件から 57.12 件),この変化は市中感染症例の増加によるものであった.
医療関連の抗菌薬耐性は,米国で患者に大きな負担をかけている.入院患者と外来患者の両方に対するより優れた介入方法を同定するには,さらなる取組みが必要である.(米国疾病管理予防センターから研究助成を受けた.)