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May 28, 2020 Vol. 382 No. 22

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高度看護施設における症状発現前の SARS-CoV-2 感染と伝播
Presymptomatic SARS-CoV-2 Infections and Transmission in a Skilled Nursing Facility

M.M. Arons and Others

背景

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)感染は高度看護施設内で急速に拡大する可能性がある.1 ヵ所の高度看護施設で Covid-19 の最初の 1 症例が同定されたあと,伝播状況を調査し,入居者の感染を確認するための症状に基づくスクリーニングの妥当性を評価した.

方 法

時点有病率調査(point-prevalence survey)を 1 週間の間隔をあけて 2 回行った.調査への参加に同意した入居者から鼻咽頭スワブ,口咽頭スワブを採取し,リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応検査(rRT-PCR),ウイルス培養,配列決定などの SARS-CoV-2 検査を行った.先行する 14 日間に認められた症状を記録した.検査が陽性で無症状であった入居者は,7 日後に症状を再評価した.SARS-CoV-2 感染が確認された入居者は,典型的症状(発熱,咳,息切れ)の症状あり,非典型的症状のみの症状あり,症状発現前,無症状に分類された.

結 果

この高度看護施設では,入居者 1 例で最初に陽性が確認されてから 23 日後の時点で,入居者 89 人中 57 人(64%)が SARS-CoV-2 陽性であった.時点有病率調査に参加した入居者 76 人では,48 人(63%)が陽性であった.この 48 人のうち,27 人(56%)は検査の時点で無症状であり,24 人にその後症状が現れた(発症までの期間の中央値 4 日).この症状発現前の 24 人の検体では,rRT-PCR 曲線と閾値が交差するサイクル数の中央値は 23.1 であり,17 人でウイルスの増幅が確認された.4 月 3 日の時点で,SARS-CoV-2 に感染した入居者 57 人のうち,11 人が入院し(集中治療室に入室した 3 人を含む),15 人が死亡していた(死亡率 26%).検体の配列決定が行われた 34 人のうち,27 人(79%)は 1 個のヌクレオチドが異なる 2 つのクラスターに分類された.

結 論

この高度看護施設では,SARS-CoV-2 の伝播が急速に拡大したことが示された.検査で陽性であった入居者の半数以上は検査の時点で無症状であり,伝播に寄与した可能性がとくに高かった.症状のある入居者に限定した感染制御対策は,この施設に SARS-CoV-2 が持ち込まれたあとの伝播を防ぐには十分ではなかった.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2020; 382 : 2081 - 90. )