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June 11, 2020 Vol. 382 No. 24

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アイスランドの住民における SARS-CoV-2 の感染拡大
Spread of SARS-CoV-2 in the Icelandic Population

D.F. Gudbjartsson and Others

背景

新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の世界的なパンデミックが起こっているなか,アイスランドでは 2 月末に最初の症例が診断された.しかし Covid-19 を引き起こすウイルス,SARS-CoV-2 がどのように住民のあいだに入り込み,拡大するのかについてのデータは限られている.

方 法

感染リスクの高い(主に,すでに症状があり,高リスク国への最近の渡航歴があるか感染者との接触歴がある)アイスランド在住者に対象を絞り,検査を行った.また住民スクリーニングとして,検査の招待を住民全員に送る手法と無作為に抽出した住民に送る手法の 2 つを用いて,それぞれ 10,797 人と 2,283 人に検査を行った.ウイルス陽性の 643 検体を用いて SARS-CoV-2 の配列決定を行った.

結 果

4 月 4 日の時点で,対象を絞った検査では 9,199 人中 1,221 人(13.3%)が SARS-CoV-2 陽性であった.一般集団で検査を受けた人では,全員招待によるスクリーニング群の 87 人(0.8%)と,無作為標本のスクリーニング群の 13 人(0.6%)が陽性であった.全体で住民の 6%がスクリーニングを受けた.対象を絞った検査群では,調査期間の前期(1 月 31 日~3 月 15 日)に陽性と判定された人の大部分に最近の海外渡航歴があり,後期(3 月 16 日~3 月 31 日)に陽性と判定された人とは異なった.対象を絞った検査群では,10 歳未満の小児は 10 歳以上の小児よりも陽性の割合が低く,それぞれ 6.7%と 13.7%であった.住民スクリーニングでは,10 歳未満の小児に陽性例はいなかったのに対し,10 歳以上の小児では 0.8%であった.女性のほうが男性よりも陽性率が低く,対象を絞った検査(11.0% 対 16.7%)と住民スクリーニング(0.6% 対 0.9%)の両方で低かった.配列決定された SARS-CoV-2 ウイルスのハプロタイプは多様であり,経時的に変化した.住民スクリーニングで感染が確認された参加者の割合は,スクリーニング期間の 20 日間で一定していた.

結 論

アイスランドにおける住民調査で,10 歳未満の小児と女性は,青年・成人,男性と比較して SARS-CoV-2 感染の発生率が低かった.住民スクリーニングで同定された感染者の割合にスクリーニング期間中大幅な変化がみられなかったことは,封じ込め対策の有益な効果に一致する結果である.(デコード・ジェネティクス社–アムジェン社から研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2020; 382 : 2302 - 15. )