ブラジルの公的医療システムにおける脳梗塞に対する血栓除去術
Thrombectomy for Stroke in the Public Health Care System of Brazil
S.O. Martins and Others
脳梗塞患者を対象とした無作為化試験で,大血管の閉塞に血栓除去術を用いた場合に転帰が改善することが証明されている.これらの試験は資源に富む国々で行われたものであり,低・中所得国の診療には限られた影響しか及ぼしていない.
ブラジルの公的医療システム内で血栓除去術の安全性と有効性を検討した.12 ヵ所の公立病院で,前方循環系の頭蓋内動脈近位部の閉塞をきたし,脳梗塞の症状発現後 8 時間以内に治療を受けることができた患者を,標準治療に加えて機械的血栓除去術を行う群(血栓除去術群)と,標準治療のみを行う群(対照群)に 1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要評価項目は 90 日の時点での修正 Rankin スケール(0 [症状なし]~6 [死亡])のスコアとした.
非盲検のロールイン(検証)期間に血栓除去術を受けた 79 例を含む,300 例を組み入れた.両群とも約 70%がアルテプラーゼの静脈内投与を受けた.登録を計画していた 690 例のうち 221 例(血栓除去術群 111 例と対照群 110 例)が無作為化された時点で有効性が認められたため,試験は早期に中止された.90 日の時点での修正 Rankin スケールスコアのより良好な分布に関する共通オッズ比は 2.28(95%信頼区間 [CI] 1.41~3.69,P=0.001)であり,血栓除去術が支持された.修正 Rankin スケールスコアが 0~2(神経障害がないか軽度)であった患者の割合は,血栓除去術群で 35.1%,対照群で 20.0%であった(差 15.1 パーセントポイント,95% CI 2.6~27.6).無症候性の頭蓋内出血が血栓除去術群の 51.4%,対照群の 24.5%に発生し,症候性頭蓋内出血が各群の 4.5%に発生した.
ブラジルの公的医療システム内で行われたこの無作為化試験では,脳梗塞の症状発現後 8 時間以内の血管内治療を標準治療に併用した場合に,標準治療単独と比較して 90 日の時点での機能的転帰が良好であった.(ブラジル保健省から研究助成を受けた.RESILIENT 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02216643)