治療歴のある HER2 陽性胃癌に対するトラスツズマブ デルクステカン
Trastuzumab Deruxtecan in Previously Treated HER2-Positive Gastric Cancer
K. Shitara and Others
トラスツズマブ デルクステカン(trastuzumab deruxtecan)(DS-8201)は,抗 HER2(ヒト上皮成長因子受容体 2)抗体,切断可能なテトラペプチドベースのリンカー,細胞毒性を有するトポイソメラーゼ I 阻害薬で構成される抗体薬物複合体である.この薬剤は HER2 陽性進行胃癌患者に有効である可能性がある.
非盲検無作為化第 2 相試験で,HER2 陽性進行胃癌患者を対象にトラスツズマブ デルクステカンと化学療法とを比較した.HER2 陽性が中央検査機関で確認され,トラスツズマブを含む 2 レジメン以上の前治療中に進行した胃腺癌または胃食道接合部腺癌の患者を,トラスツズマブ デルクステカン(6.4 mg/kg 体重を 3 週ごと)を投与する群と,医師が選択した化学療法を行う群に 2:1 の割合で無作為に割り付けた.主要評価項目は独立した中央判定による客観的奏効とした.副次的評価項目は,全生存期間,奏効期間,無増悪生存期間,確定された奏効(4 週間以上持続する奏効),安全性とした.
治療された 187 例のうち,125 例がトラスツズマブ デルクステカンの投与を受け,62 例が化学療法(イリノテカン 55 例,パクリタキセル 7 例)を受けた.客観的奏効が確認された患者の割合はトラスツズマブ デルクステカン群では 51%であったのに対し,医師が選択した化学療法群では 14%であった(P<0.001).全生存期間はトラスツズマブ デルクステカン群のほうが化学療法群よりも長かった(中央値 12.5 ヵ月 対 8.4 ヵ月,死亡のハザード比 0.59,95%信頼区間 0.39~0.88,P=0.01,事前に規定した O’Brien–Fleming 法で求めた有意水準 [死亡数に基づき 0.0202] を下回った).とくに頻度の高かったグレード 3 以上の有害事象は好中球数減少(トラスツズマブ デルクステカン群 51%,医師が選択した化学療法群 24%),貧血(それぞれ 38%と 23%),白血球数減少(21%と 11%)であった.独立判定委員会により判定されたトラスツズマブ デルクステカンに関連する間質性肺疾患または肺臓炎は,12 例に認められた(グレード 1 または 2 が 9 例,グレード 3 または 4 が 3 例).トラスツズマブ デルクステカン群では薬剤に関連する死亡(肺炎による)が 1 例あり,医師が選択した化学療法群では薬剤に関連する死亡はなかった.
トラスツズマブ デルクステカンによる治療により,標準治療と比較して HER2 陽性胃癌患者の奏効割合と全生存期間が有意に改善した.骨髄抑制と間質性肺疾患が着目すべき毒性であった.(第一三共社から研究助成を受けた.DESTINY-Gastric01 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03329690)