Covid-19 の黒人患者と白人患者における入院と死亡
Hospitalization and Mortality among Black Patients and White Patients with Covid-19
E.G. Price-Haywood and Others
新型コロナウイルス感染症(Covid-19)に関する多くの報告から,健康転帰には年齢および性と関連する差があることが強調されている.Covid-19 の転帰における人種差および民族差について,さらに情報が必要である.
後ろ向きコホート研究で,2020 年 3 月 1 日~4 月 11 日にルイジアナ州にある統合型医療提供システム(オクスナーヘルス)の医療機関を受診し,定性的ポリメラーゼ連鎖反応法で重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2,Covid-19 を引き起こすウイルス)陽性と判定された患者のデータを解析した.オクスナーヘルスの加入者集団は 31%が非ヒスパニック系黒人,65%が非ヒスパニック系白人である.主要転帰は入院と院内死亡とした.
3,626 例が検査で陽性となり,うち 145 例は除外された(84 例が人種または民族集団に関するデータ欠落,9 例がヒスパニック,52 例がアジア人またはその他の人種・民族集団).解析対象とした Covid-19 患者 3,481 例のうち,60.0%が女性,70.4%が非ヒスパニック系黒人,29.6%が非ヒスパニック系白人であった.黒人患者は白人患者よりも肥満,糖尿病,高血圧,慢性腎臓病の有病率が高かった.Covid-19 患者の 39.7%(1,382 例)が入院し,その 76.9%が黒人であった.多変量解析では,黒人であること,年齢がより高いこと,チャールソン併存疾患指数のスコアがより高い(疾病負荷がより高い)こと,公的保険(メディケアまたはメディケイド)に加入していること,低所得地域に居住していること,および肥満が,入院オッズの上昇と関連していた.Covid-19 で死亡した 326 例のうち 70.6%は黒人であった.補正した生存期間(time-to-event)解析では,院内死亡率がより高いことに関連する変数は,年齢がより高いこと,受診時の呼吸数の高値,静脈血乳酸値・クレアチニン値・プロカルシトニン値の上昇,血小板数・リンパ球数の減少であった.しかし,黒人であることには,死亡率がより高いこととの独立した関連は認められなかった(白人に対する死亡のハザード比 0.89,95%信頼区間 0.68~1.17).
ルイジアナ州の大規模コホートにおいて,Covid-19 で入院した患者の 76.9%,Covid-19 で死亡した患者の 70.6%が黒人であったが,オクスナーヘルスの加入者集団における黒人の割合は 31%にとどまる.入院時の社会人口統計学的特性と臨床的特性の差を補正すると,黒人であることは院内死亡率がより高いこととは関連しなかった.