March 12, 2020 Vol. 382 No. 11
急性呼吸促迫症候群に対する非制限的酸素療法と制限的酸素療法との比較
Liberal or Conservative Oxygen Therapy for Acute Respiratory Distress Syndrome
L. Barrot and Others
急性呼吸促迫症候群(ARDS)患者では,動脈血酸素分圧(PaO2)の目標値を 55~80 mmHg とすることを米国国立心臓・肺・血液研究所の ARDS 臨床試験ネットワークは推奨している.ARDS 患者でこの目標範囲の妥当性を前向きに検証したデータはない.われわれは,この範囲の下限値を目標とした場合に ARDS 患者の転帰が改善するという仮説を立てた.
多施設共同無作為化試験で,ARDS 患者を,7 日間の制限的酸素療法(目標 PaO2 55~70 mmHg,パルスオキシメータ測定による酸素飽和度 [SpO2] 88~92%)を受ける群と,非制限的酸素療法(目標 PaO2 90~105 mmHg,SpO2 96%以上)を受ける群に割り付けた.両群で同じ人工呼吸管理戦略を用いた.主要転帰は 28 日の時点での全死因死亡とした.
205 例の登録後,試験は,安全性の懸念のため,また,主要転帰に 2 群間で有意差が認められる可能性が低いため,データ安全性モニタリング委員会により早期に中止された.適格基準を満たさなかった 4 例は除外された.28 日の時点で,制限的酸素療法群の 99 例中 34 例(34.3%)と非制限的酸素療法群の 102 例中 27 例(26.5%)が死亡していた(差 7.8 パーセントポイント,95%信頼区間 [CI] -4.8~20.6).90 日の時点で,制限的酸素療法群の 44.4%と非制限的酸素療法群の 30.4%が死亡していた(差 14.0 パーセントポイント,95% CI 0.7~27.2).制限的酸素療法群では 5 件の腸間膜虚血イベントが発現した.
ARDS 患者では,PaO2 を 55~70 mmHg とする制限的酸素化戦略を早期に行っても,28 日生存率が上昇することはなかった.(フランス保健省から研究助成を受けた.LOCO2 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02713451)