September 17, 2020 Vol. 383 No. 12
死産の原因遺伝子変異
Causal Genetic Variants in Stillbirth
K.E. Stanley and Others
死産症例の大部分では,詳細な臨床的評価や検査評価を行っても原因不明のままである.死産のおよそ 10~20%は染色体異常に起因する.しかし,原因としてのエクソームの一塩基変異や小さな挿入・欠失の役割は十分に検討されていない.
死産 246 例のエクソームシーケンシングデータを生成し,確立されたガイドラインに従って疾患関連遺伝子における原因変異を同定した.これらの遺伝子には,死産との関連が認められている遺伝子や,有力な候補遺伝子が含まれた.機能的変異における喪失の程度(ここでは変異に対する「不寛容」と呼ぶ)に従って層別化した症例対照解析で,18,653 個の遺伝子の寄与も評価した.
死産 246 例のうち,死産との関与が認められている遺伝子 7 個と,表現型多様化の有力な候補疾患遺伝子 6 個から,15 例(6.1%)で分子診断を行いえた.評価した症例では,ヒトの集団で機能喪失型変異不寛容の遺伝子に機能喪失型変異が濃縮していることもわかった(オッズ比 2.15,95%信頼区間 [CI] 1.46~3.06).不寛容遺伝子の機能喪失型変異は,ヒトの疾患との関連が認められていない遺伝子に集中していたが(オッズ比 2.22,95% CI 1.41~3.34),この知見は,この研究で同時に評価した出生後に疾患が認められた 2 つの集団の知見とは異なっていた.
今回の知見から,ゲノムの小さな変化が死産に果たす役割を評価するための臨床的なエクソームシーケンシングの診断的有用性が確立される.新規のリスクシグナル(層別化解析で得られたもの)の強さは既知の疾患遺伝子と同等であったことから,死産の遺伝的原因は,大部分が依然として不明であることを示している.(コロンビア大学ゲノム医学研究所から研究助成を受けた.)