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July 9, 2020 Vol. 383 No. 2

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Covid-19 における肺血管内皮炎,血栓症,血管新生
Pulmonary Vascular Endothelialitis, Thrombosis, and Angiogenesis in Covid-19

M. Ackermann and Others

背景

進行性呼吸不全は,新型コロナウイルス感染症(Covid-19)パンデミックにおける主な死因である.この疾患の病態生理への関心が拡大しているにもかかわらず,Covid-19 で死亡する患者の末梢肺の形態学的・分子的変化について明らかにされていることは比較的少ない.

方 法

Covid-19 で死亡した患者 7 例の剖検時に得られた肺検体を検討し,インフルエンザ A(H1N1)感染に続発する急性呼吸促迫症候群(ARDS)で死亡した患者 7 例の剖検時に得られた肺,および年齢をマッチさせた感染していない対照 10 例の肺と比較した.肺の評価には 7 色免疫組織化学的解析,マイクロ CT 撮影,走査型電子顕微鏡,血管鋳型法,遺伝子発現の直接多重測定を用いた.

結 果

Covid-19 による呼吸不全で死亡した患者とインフルエンザによる肺炎で死亡した患者の末梢肺の組織パターンは,血管周囲に T 細胞の浸潤を伴うびまん性肺胞傷害であった.Covid-19 患者の肺にはさらに,細胞内における SARS-CoV-2 の存在と細胞膜の破壊を伴う重度の血管内皮損傷という特異な血管像を認めた.Covid-19 患者の肺血管の組織学的解析では,微小血管障害を伴う広範な血栓を認めた.Covid-19 患者では,肺胞毛細血管内の微小血栓の有病率がインフルエンザ患者の 9 倍であった(P<0.001).Covid-19 患者の肺では,主に重積血管新生(intussusceptive angiogenesis)の機序を介した新生血管の量がインフルエンザ患者の 2.7 倍であった(P<0.001).

結 論

この小規模症例シリーズでは,Covid-19 患者の肺の病理所見と,同等の重症度のインフルエンザウイルス感染患者の肺の病理所見は血管新生によって区別された.この観察結果の普遍性と臨床的意義を明らかにするためにはさらなる研究が必要である.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2020; 383 : 120 - 8. )