瘙痒を伴うアトピー性皮膚炎に対するネモリズマブと外用薬の試験
Trial of Nemolizumab and Topical Agents for Atopic Dermatitis with Pruritus
K. Kabashima and Others
ネモリズマブ(nemolizumab)は,アトピー性皮膚炎の瘙痒と炎症に関与するインターロイキン-31 受容体 A に対するヒト化モノクローナル抗体であり,投与は皮下注射で行われる.第 2 相試験で,ネモリズマブはアトピー性皮膚炎の重症度を低下させた.
16 週間の二重盲検第 3 相試験で,アトピー性皮膚炎と中等度~重度の瘙痒を有し,外用薬に対する反応が不十分な日本人患者を,外用薬との併用下で,ネモリズマブ(60 mg)を 4 週ごとに 16 週目まで皮下投与する群と,プラセボを投与する群に 2:1 の割合で無作為に割り付けた.主要エンドポイントは,瘙痒ビジュアルアナログスケール(VAS)スコア(0~100 で,スコアが高いほど瘙痒が強いことを示す)のベースラインから 16 週目までの平均変化率とした.副次的エンドポイントは,4 週目までの瘙痒 VAS スコアの変化率の推移,湿疹面積・重症度指数(EASI)スコア(0~72 で,スコアが高いほど重症であることを示す)の変化率,皮膚科 QOL 指数(DLQI)スコア(0~30 で,スコアが高いほど日常生活への影響が大きいことを示す)が 4 以下,不眠重症度指数(ISI)スコア(0~28 で,スコアが高いほど重症であることを示す)が 7 以下,安全性などとした.
143 例がネモリズマブ群,72 例がプラセボ群に無作為に割り付けられた.ベースラインの瘙痒 VAS スコアの中央値は 75 であった.16 週目の時点で,VAS スコアの平均変化率はネモリズマブ群で -42.8%,プラセボ群で -21.4%であった(差 -21.5 パーセントポイント,95%信頼区間 -30.2~-12.7,P<0.001).EASI スコアの平均変化率はネモリズマブ群で -45.9%,プラセボ群で -33.2%であった.DLQI スコアが 4 以下であった患者の割合はネモリズマブ群で 40%,プラセボ群で 22%であり,ISI スコアが 7 以下であった患者の割合はそれぞれ 55%と 21%であった.注射関連反応の発現率はネモリズマブ群で 8%,プラセボ群で 3%であった.
この 16 週間の試験では,アトピー性皮膚炎に対し,ネモリズマブの皮下投与を外用薬と併用することで,プラセボ+外用薬と比較して瘙痒が大きく減少した.注射部位反応の発現率はネモリズマブ群のほうがプラセボ群よりも高かった.アトピー性皮膚炎に対するネモリズマブの効果の持続性と安全性を明らかにするためには,より長期かつ大規模な試験が必要である.(マルホ社から研究助成を受けた.JapicCTI 登録番号 173740)