October 22, 2020 Vol. 383 No. 17
自己免疫性肺胞蛋白症に対するモルグラモスチム吸入療法
Inhaled Molgramostim Therapy in Autoimmune Pulmonary Alveolar Proteinosis
B.C. Trapnell and Others
自己免疫性肺胞蛋白症(aPAP)は,サーファクタントの進行性の蓄積と低酸素血症を特徴とするまれな疾患である.この疾患は,肺胞マクロファージがサーファクタントを分解する際に必要とする,顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)のシグナル伝達の異常によって引き起こされる.最近,GM-CSF の吸入により aPAP 患者の動脈血酸素分圧が改善することが示された.
二重盲検プラセボ対照 3 群試験で,aPAP 患者を,遺伝子組換え GM-CSF であるモルグラモスチム(molgramostim)(300 mg,1 日 1 回吸入)を持続的に投与する群,間欠的(隔週)に投与する群,マッチさせたプラセボを投与する群に無作為に割り付けた.24 週の介入期間後に,非盲検の延長期間を設けた.主要評価項目は,肺胞気動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)のベースラインから 24 週目までの変化量とした.
138 例を無作為化した.内訳はモルグラモスチム持続投与群 46 例,モルグラモスチム間欠投与群 45 例,プラセボ投与群 47 例であった.動脈血液ガス測定時に経鼻酸素療法を受けていた 4 例(モルグラモスチム各群 1 例,プラセボ群 2 例)の無効な A-aDO2 データは,代入法により補完した.主要評価項目である A-aDO2 のベースラインから 24 週目までの変化量には,モルグラモスチムの持続投与を受けた患者で,プラセボ投与を受けた患者よりも大きな改善が認められた(-12.8 mmHg 対 -6.6 mmHg,推定治療差 -6.2 mmHg,最小二乗平均の比較で P=0.03).モルグラモスチムの持続投与を受けた患者では,副次的評価項目についても改善がプラセボ投与を受けた患者よりも大きく,セントジョージ呼吸器質問票の総スコアのベースラインから 24 週目までの変化量(-12.4 点 対 -5.1 点,推定治療差 -7.4 点,最小二乗平均の比較で P=0.01)などが含まれた.複数の評価項目について,モルグラモスチム持続投与群のほうがモルグラモスチム間欠投与群よりも大きかった.有害事象が発現した患者の割合と重篤な有害事象が発現した患者の割合は,胸痛を呈した患者の割合がモルグラモスチム持続投与群で高かったことを除いて,3 群で同程度であった.
aPAP 患者に対するモルグラモスチムの連日吸入投与は,プラセボ投与と比較して,肺のガス交換と機能的健康状態に大きな改善をもたらし,有害事象の発現率は同程度であった.(サバラファーマシューティカルズ社から研究助成を受けた.IMPALA 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02702180)