November 12, 2020 Vol. 383 No. 20
院内での臨床的悪化のリスクがある成人の自動同定
Automated Identification of Adults at Risk for In-Hospital Clinical Deterioration
G.J. Escobar and Others
成人入院患者のうち,病棟(集中治療室 [ICU] 以外)で容態が悪化する患者は,合併症発症率と死亡率が高い.臨床的悪化のリスクがある患者の早期の同定は,手で計算したスコアに頼ってきた.臨床的悪化のリスクが自動検出された場合の転帰はまだ広く報告されていない.
臨床的悪化のリスクが高い入院患者を同定するための,電子診療録の情報を用いた妥当性の確認されたモデル(自動かつリアルタイムでのリスクスコアの算出が可能)に基づく介入プログラムを開発した.高リスクと同定された患者については,その診療録を再検討した看護師が遠隔モニタリングを行い,モニタリングの結果が院内急変対応チームに通知された.システムの運用を開始した病院(介入施設:警告に基づき臨床的対応がなされた)で容態が警告閾値に達した(ICU 以外の)入院患者の転帰(主要評価項目である警告後 30 日以内の死亡率を含む)を,システムの運用開始前の病院(比較施設)で容態が警告閾値に達した(すなわち,システムが運用されていれば警告後臨床的対応がなされたと思われる容態の)患者の転帰と比較した.人口統計学的特性,疾患の重症度,併存疾患の負荷で補正して多変量解析を行った.
2016 年 8 月 1 日~2019 年 2 月 28 日に,19 の病院で時間差を設けてプログラムを導入した.患者 326,816 例の ICU 以外の入院 548,838 件が同定された.43,949 件の入院(患者 35,669 例)で患者の容態が警告閾値に達した.このうち介入コホートに含まれたのは 15,487 件,比較コホートに含まれたのは 28,462 件であった.警告後 30 日以内の死亡率は,介入コホートのほうが比較コホートよりも低かった(補正相対リスク 0.84,95%信頼区間 0.78~0.90,P<0.001).
急変対応チームによる介入の実施が可能な高リスク患者を同定する自動予測モデルの使用は,死亡率の低下と関連した.(ゴードン&ベティ・ムーア財団ほかから研究助成を受けた.)