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November 12, 2020 Vol. 383 No. 20

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アジスロマイシンの集団配布によるマクロライドおよびマクロライド以外の抗菌薬に対する耐性
Macrolide and Nonmacrolide Resistance with Mass Azithromycin Distribution

T. Doan and Others

背景

就学前児に対するアジスロマイシンの集団配布を年 2 回,2 年間行うことで,サハラ以南のアフリカで小児死亡率が低下するが,マクロライド耐性の増加という代償を伴うことが示されている.腸のレジストーム(gut resistome)は体内で抗菌薬耐性遺伝子が集まる場所を指すが,年 2 回のアジスロマイシン投与をより長期に行った場合の,腸のレジストームへの影響は明らかにされていない.

方 法

小児がアジスロマイシンの年 2 回の配布を 4 年間受けたあと,腸のレジストームを調査した.MORDOR 試験が行われているニジェールの地域で,同時試験として 30 の村落を組み入れ,生後 1~59 ヵ月の小児全員に 6 ヵ月ごとに 4 年間アジスロマイシンを集団配布する群と,プラセボを集団配布する群に無作為に割り付けた.参加者の腸のレジストームを解析するため,直腸スワブをベースライン時,36 ヵ月時,48 ヵ月時に採取した.主要評価項目は,48 ヵ月時のアジスロマイシン群のプラセボ群に対するマクロライド耐性因子の比とした.

結 果

48 ヵ月の期間全体における服用率の平均(±SD)は,プラセボの配布を受けた村落で 86.6±12%,アジスロマイシンの配布を受けた村落で 83.2±16.4%であった.全試験期間に 3,232 検体が採取され,48 ヵ月後の受診時に得られた検体のうち,プラセボの配布を受けた 15 村落の 546 検体と,アジスロマイシンの配布を受けた 14 村落の 504 検体を分析した.マクロライド耐性因子はアジスロマイシン群のほうがプラセボ群よりも多く,36 ヵ月の時点で 7.4 倍(95%信頼区間 [CI] 4.0~16.7),48 ヵ月の時点で 7.5 倍(95% CI 3.8~23.1)であった.アジスロマイシンの継続的な集団配布により,アフリカのこの地域で頻繁に処方される抗菌薬のクラスの β ラクタム系抗菌薬への耐性を含む,マクロライド以外への耐性の選択も増加した.

結 論

アジスロマイシンまたはプラセボの集団配布を年 2 回,4 年間受けた村落のうち,アジスロマイシンの配布を受けた村落のほうがプラセボの配布を受けた村落よりも抗菌薬耐性が多く認められた.この試験から,アジスロマイシンの集団配布により抗菌薬耐性が拡大する可能性があることが示された.(ビル&メリンダ・ゲイツ財団ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02047981)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2020; 383 : 1941 - 50. )