急性期脳梗塞または一過性脳虚血発作に対するチカグレロルとアスピリンの併用とアスピリン単独との比較
Ticagrelor and Aspirin or Aspirin Alone in Acute Ischemic Stroke or TIA
S.C. Johnston and Others
脳梗塞または一過性脳虚血発作(TIA)後の脳卒中の予防に,クロピドグレルとアスピリンの併用がいくつかの試験で評価されている.チカグレロルは,1 件の試験では脳梗塞または TIA 後の血管イベントまたは死亡の予防に関して,アスピリンよりも優れてはいなかった.チカグレロルとアスピリンを併用した場合の脳卒中予防における効果は十分検討されていない.
米国国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)スコア(0~42 で,スコアが高いほど脳卒中が重症であることを示す)が 5 以下の軽症~中等症の急性期非心原性脳梗塞,または TIA を発症し,血栓溶解療法または血栓除去術が予定されていない患者を対象に無作為化プラセボ対照二重盲検試験を行った.患者を,症状発現後 24 時間以内に,チカグレロル(負荷用量 180 mg,その後は 90 mg を 1 日 2 回)+アスピリン(1 日目に 300~325 mg,その後は 75~100 mg/日)の 30 日間レジメン,またはマッチさせたプラセボ+アスピリンの 30 日間レジメンに 1:1 の割合で割り付けた.主要転帰は 30 日以内の脳卒中または死亡の複合とした.副次的転帰は,30 日以内の脳梗塞の初回再発,および障害の発生とした.主要安全性転帰は重度の出血とした.
11,016 例が無作為化された(チカグレロル+アスピリン群 5,523 例,アスピリン群 5,493 例).主要転帰のイベントはチカグレロル+アスピリン群の 303 例(5.5%)と,アスピリン群の 362 例(6.6%)に発生した(ハザード比 0.83,95%信頼区間 [CI] 0.71~0.96,P=0.02).脳梗塞はチカグレロル+アスピリン群の 276 例(5.0%)と,アスピリン群の 345 例(6.3%)に発生した(ハザード比 0.79,95% CI 0.68~0.93,P=0.004).障害の発生に 2 群間で有意差は認められなかった.重度の出血はチカグレロル+アスピリン群の 28 例(0.5%)と,アスピリン群の 7 例(0.1%)に発生した(P=0.001).
軽症~中等症(NIHSS スコア 5 以下)の急性期非心原性脳梗塞または TIA を発症し,静脈内・動脈内血栓溶解療法または血栓除去術が予定されていない患者では,30 日以内の脳卒中または死亡の複合転帰のリスクは,チカグレロル+アスピリン群のほうがアスピリン単独群よりも低かったが,障害の発生に 2 群間で有意差は認められなかった.重度の出血の頻度はチカグレロル群のほうが高かった.(アストラゼネカ社から研究助成を受けた.THALES 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03354429)