August 27, 2020 Vol. 383 No. 9
RET 変異陽性甲状腺癌に対するセルペルカチニブの有効性
Efficacy of Selpercatinib in RET-Altered Thyroid Cancers
L.J. Wirth and Others
RET 変異は甲状腺髄様癌の 70%に生じており,他の甲状腺癌で RET 融合遺伝子が生じることはまれである.RET 変異を有する甲状腺癌患者における選択的 RET 阻害の有効性と安全性は明らかにされていない.
セルペルカチニブ(selpercatinib)の第 1・2 相試験で,バンデタニブまたはカボザンチニブによる治療歴の有無を問わず RET 変異を有する甲状腺髄様癌患者と,治療歴のある RET 融合遺伝子陽性甲状腺癌患者を組み入れた.主要エンドポイントは,独立判定委員会の判定による客観的奏効(完全奏効または部分奏効)とした.副次的エンドポイントは,奏効期間,無増悪生存,安全性などとした.
バンデタニブまたはカボザンチニブあるいはその両方による治療歴があり,RET 変異を有する甲状腺髄様癌患者で,連続して登録された最初の 55 例では,奏効が得られた割合は 69%(95%信頼区間 [CI] 55~81)であり,1 年無増悪生存率は 82%(95% CI 69~90)であった.バンデタニブまたはカボザンチニブによる治療歴のない RET 変異を有する甲状腺髄様癌患者 88 例では,奏効が得られた割合は 73%(95% CI 62~82)であり,1 年無増悪生存率は 92%(95% CI 82~97)であった.治療歴のある RET 融合遺伝子陽性甲状腺癌患者 19 例では,奏効が得られた割合は 79%(95% CI 54~94)であり,1 年無増悪生存率は 64%(95% CI 37~82)であった.とくに頻度の高かったグレード 3 以上の有害事象は,高血圧(患者の 21%),アラニンアミノトランスフェラーゼ上昇(11%),アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ上昇(9%),低ナトリウム血症(8%),下痢(6%)であった.投与を受けた全 531 例のうち,12 例(2%)が薬剤関連有害事象のためにセルペルカチニブを中止した.
第 1・2 相試験で,セルペルカチニブは,バンデタニブまたはカボザンチニブによる治療歴の有無を問わず甲状腺髄様癌患者において持続的な有効性を示し,毒性は主に低グレードであった.( ロキソ・オンコロジー社ほかから研究助成を受けた.LIBRETTO-001 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03157128)