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January 21, 2021 Vol. 384 No. 3

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鎌状赤血球症の治療を目的とした BCL11A の転写後遺伝子サイレンシング
Post-Transcriptional Genetic Silencing of BCL11A to Treat Sickle Cell Disease

E.B. Esrick and Others

背景

鎌状赤血球症は,溶血性貧血,疼痛発作,進行性の臓器障害を特徴とする.赤血球中の,αグロビンとγグロビンから成る胎児ヘモグロビン(HbF)の濃度が高ければ,鎌状ヘモグロビン(HbS)の重合と赤血球の鎌状化が抑制され,これらの症状の発現が緩和される可能性がある.BCL11A は,成人の赤血球においてγグロビンの発現と HbF の産生を抑制する因子である.そのダウンレギュレーションは,HbF を誘導し治療する戦略として有望である.

方 法

鎌状赤血球症患者を単一施設非盲検パイロット試験に登録した.試験治療には,BCH-BB694 レンチウイルスベクターで遺伝子導入した自家 CD34 陽性細胞の注入が含まれた.このベクターはマイクロ RNA 中に埋め込まれた,BCL11A mRNA を標的とする短鎖ヘアピン RNA(shRNA),すなわち shmiR をコードし,赤血球系特異的なノックダウンを可能にする.主要エンドポイントである細胞生着と安全性,治療に対する血液学的反応と臨床的反応について患者を評価した.

結 果

2020 年 10 月の時点で,BCH-BB694 遺伝子治療を受け,6 ヵ月以上追跡されていた患者は 6 例であった.追跡期間の中央値は 18 ヵ月(範囲 7~29)であった.全例で生着が認められ,有害事象は前処置の化学療法の作用と一致した.完全な評価を行いえた全例で,高く安定した HbF 誘導が確認され(直近の追跡調査の時点で HbF/(HbF+HbS)の割合 20.4~41.3%),HbF は赤血球に広く分布し(非輸血赤血球に占める F 細胞の割合 58.9~93.6%),F 細胞 1 個あたりの HbF は 9.0~18.6 pg であった.追跡期間中における鎌状赤血球症の臨床症状の発現は,減少したかみられなかった.

結 論

この試験により,HbF 誘導の有効な標的としての BCL11A 抑制の妥当性が確認され,shmiR を用いた遺伝子ノックダウンが,鎌状赤血球症に好ましいリスク・利益プロファイルをもたらすという予備的エビデンスが得られた.(米国国立衛生研究所から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03282656)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2021; 384 : 205 - 15. )