September 23, 2021 Vol. 385 No. 13
アフリカにおけるアルテミシニン耐性マラリアの証明
Evidence of Artemisinin-Resistant Malaria in Africa
B. Balikagala and Others
東南アジアの大メコン圏 6 ヵ国において,熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)は第一選択治療の主軸であるアルテミシニン誘導体に耐性を獲得している.アフリカなどその他の地域においても,アルテミシニン単剤に対する臨床的耐性の出現が懸念される.
ウガンダ北部で縦断研究を実施した.熱帯熱マラリア患者に対してアルテスナート(artesunate)(水溶性のアルテミシニン誘導体)を静脈内投与し原虫半減期を推定した.原虫の ex vivo 薬剤感受性を ring-stage survival assay(輪状体期生存アッセイ)を用いて評価し,さらに薬剤耐性に関連する遺伝子型を決定した.
2017~19 年にアルテスナートの静脈内投与を受けた 240 例の中で,14 例にアルテミシニンへの in vivo 耐性(原虫半減期>5 時間)が証明された.これら 14 例中 13 例が kelch13 遺伝子に A675V または C469Y 変異をもつ熱帯熱マラリア原虫に感染していた.それらの変異は原虫半減期の延長と関連していた(幾何平均:野生型 1.78 時間に対し,A675V 3.95 時間,C469Y 3.30 時間;それぞれ P<0.001,P=0.05).ring-stage survival assay において A675V 変異をもつ原虫は野生型よりも高い生存率を示した.kelch13 に変異をもつ原虫の割合は 2015 年の 3.9%から 2019 年の 19.8%へと有意に上昇し,A675V と C469Y の増加が主な要因であった(それぞれ P<0.001,P=0.004).A675V 変異周辺の一塩基多型群はウガンダと東南アジアとで大きく異なっていた.
臨床的アルテミシニン耐性を示す熱帯熱マラリア原虫がアフリカに独自の起源をもって出現し,地域内で拡散していることが確認された.2 つの kelch13 変異はこれら耐性原虫の検出マーカーとなる可能性がある.(日本学術振興会ほかから研究助成を受けた.)