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October 21, 2021 Vol. 385 No. 17

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肥満関連 GNAS 変異とメラノコルチン経路
Obesity-Associated GNAS Mutations and the Melanocortin Pathway

E. Mendes de Oliveira and Others

背景

GNAS は,G 蛋白質共役受容体(GPCR)のシグナル伝達を仲介する Gαs(刺激性 G 蛋白質αサブユニット)蛋白質をコードする遺伝子である.オールブライト遺伝性骨形成異常症と呼ばれる症候群では,GNAS 変異が発育遅延,低身長,骨格異常を引き起こす.インプリンティングのため,母方アレルの GNAS 変異も,肥満とホルモン抵抗性(偽性副甲状腺機能低下症)を引き起こす.

方 法

重度肥満児 2,548 例でエクソームシーケンシングとターゲットリシーケンシングを行ったところ,予想外に GNAS 変異保有者を 22 例同定した.GNAS 変異がメラノコルチン 4 受容体(MC4R)シグナル伝達に及ぼす影響により肥満が説明されるのか,また,患児の多様な臨床スペクトルが分子検査の結果から説明されうるのかを検討した.

結 果

ほぼすべての GNAS 変異により,MC4R シグナル伝達は抑制された.12~18 歳の 11 例中 6 例に低成長が認められた.これらの患児では,変異により成長ホルモン放出ホルモン受容体のシグナル伝達が抑制されていたが,このシグナル伝達経路に影響を及ぼさない変異の保有者では,成長への影響は認められなかった(身長標準偏差スコアの平均 -0.90 対 0.75,P=0.02).研究前または研究中に最終身長に達した 10 例のうち,低身長は 1 例のみに認められた.甲状腺刺激ホルモン受容体のシグナル伝達を抑制する GNAS 変異は,発育遅延,および高い甲状腺刺激ホルモン濃度(平均 [±SD] 8.4±4.7 mIU/L)と関連し,この甲状腺刺激ホルモン濃度は,GNAS 変異を有しない重度肥満児 340 例の濃度(3.9±2.6 mIU/L)と比較して高かった(P=0.004).

結 論

病因性変異は肥満のみで発症する場合があるため,重度肥満児に対する機能喪失型 GNAS 変異のスクリーニングにより早期診断と臨床転帰の改善が可能となり,また,メラノコルチン作動薬が体重減少に有用である可能性がある.偏りのない遺伝子検査で同定される複数の GNAS 変異は,臨床的不均一性に寄与する GPCR シグナル伝達経路に異なる影響を及ぼしている.単一遺伝子疾患は,過去の記述が示唆するよりも臨床的に多様である.(ウェルカムトラストほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2021; 385 : 1581 - 92. )