トランスサイレチンアミロイドーシスに対する CRISPR-Cas9 による in vivo 遺伝子編集
CRISPR-Cas9 In Vivo Gene Editing for Transthyretin Amyloidosis
J.D. Gillmore and Others
トランスサイレチンアミロイドーシスは,ATTR アミロイドーシスとも呼ばれ,ミスフォールドしたトランスサイレチン(TTR)蛋白が組織,主に神経と心臓に進行性に蓄積することを特徴とする,生命を脅かす疾患である.NTLA-2001 は,血清中の TTR 濃度を低下させることにより ATTR アミロイドーシスを治療するようデザインされた in vivo 遺伝子編集治療薬である.これは,クラスター化された,規則的に間隔があいた短い回文構造の繰り返し,および関連する Cas9 エンドヌクレアーゼ(CRISPR-Cas9)システムをベースとしたもので,Cas9 蛋白のメッセンジャー RNA と,TTR を標的とするシングルガイド RNA を内包した脂質ナノ粒子から構成される.
in vitro および in vivo の前臨床試験を行った後,多発ニューロパチーを伴う遺伝性 ATTR アミロイドーシス患者 6 例で,NTLA-2001 の単回投与の用量を漸増し,安全性と薬力学的作用を評価した.進行中の第 1 相臨床試験内で,2 つの初回用量(0.1 mg/kg と 0.3 mg/kg)の投与をそれぞれ 3 例が受けた.
前臨床試験では,単回投与後に TTR の持続的なノックアウトが示された.患者への静注後 28 日間の安全性の連続評価では,有害事象は少なく,発現した事象のグレードは軽度であった.用量依存的な薬力学的作用が観察された.28 日の時点で,血清 TTR 蛋白濃度のベースライン時からの低下率の平均は,0.1 mg/kg 群では 52%(範囲 47~56),0.3 mg/kg 群では 87%(範囲 80~96)であった.
多発ニューロパチーを伴う遺伝性 ATTR アミロイドーシス患者の小規模集団において,NTLA-2001 の投与は軽度の有害事象のみを伴い,TTR を標的としたノックアウトを介して血清 TTR 蛋白濃度の低下をもたらした.(インテリア セラピューティクス社,リジェネロン ファーマシューティカルズ社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04601051)