August 12, 2021 Vol. 385 No. 7
静脈血栓塞栓症予防のためのアベラシマブ
Abelacimab for Prevention of Venous Thromboembolism
P. Verhamme and Others
術後静脈血栓塞栓症の成因における第 XI 因子の役割は明らかにされていない.アベラシマブ(abelacimab)は,第 XI 因子に結合しそれをチモーゲン(不活性前駆体)の構造に固定するモノクローナル抗体である.
非盲検並行群間試験で,人工膝関節全置換術を受ける患者 412 例を,アベラシマブを 30 mg,75 mg,150 mg のいずれかのレジメンで術後に単回静脈内投与する 3 群と,エノキサパリン 40 mg を 1 日 1 回皮下投与する群に無作為に割り付けた.主要有効性転帰は静脈血栓塞栓症とし,手術した脚の必須の静脈造影,または症候性イベントの客観的確認により検出した.主要安全性転帰は,術後 30 日までの大出血,または大出血ではないが臨床的に重要な出血の複合とした.
静脈血栓塞栓症はアベラシマブ 30 mg 群の 102 例中 13 例(13%),75 mg 群の 99 例中 5 例(5%),150 mg 群の 98 例中 4 例(4%)に発生したのに対し,エノキサパリン群では 101 例中 22 例(22%)に発生した.アベラシマブ 30 mg のレジメンはエノキサパリンに対する非劣性を示し,アベラシマブ 75 mg のレジメンと 150 mg のレジメンはエノキサパリンに対する優越性を示した(P<0.001).出血はアベラシマブ 30 mg 群の 2%と 75 mg 群の 2%に発生し,アベラシマブ 150 mg 群とエノキサパリン群では発生しなかった.
この試験では,術後静脈血栓塞栓症の発生に第 XI 因子が重要であることが示された.人工膝関節全置換術後のアベラシマブ単回静脈内投与による第 XI 因子阻害は,静脈血栓塞栓症の予防に有効であり,出血のリスクが低いことに関連した.(アンソス セラピューティクス社から研究助成を受けた.ANT-005 TKA 試験:EudraCT 登録番号 2019-003756-37)