January 20, 2022 Vol. 386 No. 3
不顕性リウマチ性心疾患に対する二次予防としての抗菌薬投与
Secondary Antibiotic Prophylaxis for Latent Rheumatic Heart Disease
A. Beaton and Others
リウマチ性心疾患に罹患している人は世界で 4,050 万人を超え,毎年約 306,000 人が死亡している.心エコーによるスクリーニングによって,早期の不顕性の段階で発見することができる.二次予防としての抗菌薬投与が,不顕性リウマチ性心疾患の進行予防に有効かどうかは不明である.
不顕性リウマチ性心疾患を有するウガンダの 5~17 歳の小児・思春期児に対する,二次予防としての抗菌薬投与に関する無作為化比較試験を行った.患児を,ペニシリン G ベンザチン(ベンジルペニシリンベンザチンとしても知られる)の筋注を 4 週ごとに 2 年間行う群と,予防を行わない群に無作為に割り付けた.全例がベースライン時と無作為化後 2 年の時点で心エコー検査を受けた.ベースラインからの変化は,試験群の割付けを知らないメンバーから成る委員会が判定した.主要評価項目は,2 年の時点での不顕性リウマチ性心疾患の心エコー上の進行とした.
スクリーニング心エコー検査を受けた小児・思春期児 102,200 例のうち,最初に 3,327 例が不顕性リウマチ性心疾患を有すると評価された.その後,3,327 例中 926 例が確認のための心エコー検査に基づいて確定診断を受け,試験に適格とされた.試験参加に対する保護者または本人の同意は 916 例から得られ,全例が無作為化を受けた.818 例が修正 intention-to-treat 解析の対象となり,799 例(97.7%)が試験を完了した.予防投与群では,2 年の時点での心エコー上の進行は 3 例(0.8%)に認められたのに対し,対照群では 33 例(8.2%)に認められた(リスク差 -7.5 パーセントポイント,95%信頼区間 -10.2~-4.7,P<0.001).予防投与群の 2 例で予防投与に起因する重篤な有害事象が発現し,軽度のアナフィラキシー反応 1 件(全注射回数の 0.1%未満)が含まれた.
不顕性リウマチ性心疾患を有する 5~17 歳の小児・思春期児において,二次予防としての抗菌薬投与により,2 年の時点での疾患進行リスクが低下した.集団レベルでのスクリーニングの導入を推奨するには,さらなる研究が必要である.(スラッシャー研究基金ほかから研究助成を受けた.GOAL 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03346525)