成人重症患者における調整多電解質溶液と生理食塩水との比較
Balanced Multielectrolyte Solution versus Saline in Critically Ill Adults
S. Finfer and Others
重症患者に対して,0.9%塩化ナトリウム溶液(生理食塩水)よりも調整多電解質溶液(BMES)を使用することで,急性腎障害または死亡のリスクを低下させられるかどうかは明らかにされていない.
二重盲検無作為化比較試験で,重症患者を,集中治療室(ICU)における輸液療法として,BMES(Plasma-Lyte 148)を 90 日間投与する群と生理食塩水を投与する群に割り付けた.主要転帰は,無作為化後 90 日以内の全死因死亡とした.副次的転帰は,新規腎代替療法の施行と,ICU 在室中のクレアチニン値の最大増加量とした.
オーストラリアとニュージーランドの 53 の ICU で 5,037 例が登録され,2,515 例が BMES 群,2,522 例が生理食塩水群に割り付けられた.無作為化後 90 日以内の死亡は,BMES 群の 2,433 例中 530 例(21.8%)と生理食塩水群の 2,413 例中 530 例(22.0%)に発生し,差は -0.15 パーセントポイント(95%信頼区間 [CI] -3.60~3.30,P=0.90)であった.新規腎代替療法は,BMES 群の 2,403 例中 306 例(12.7%)と生理食塩水群の 2,394 例中 310 例(12.9%)で開始され,差は -0.20 パーセントポイント(95% CI -2.96~2.56)であった.血清クレアチニン値の最大増加量の平均(±SD)は,BMES 群で 0.41±1.06 mg/dL(36.6±94.0 μmol/L),生理食塩水群で 0.41±1.02 mg/dL(36.1±90.0 μmol/L)であり,差は 0.01 mg/dL(95% CI -0.05~0.06)(0.5 μmol/L [95% CI -4.7~5.7])であった.有害事象の件数と重篤な有害事象の件数に,群間で意味のある差は認められなかった.
ICU に入室した成人重症患者に対して,BMES を使用するほうが,生理食塩水を使用するよりも死亡または急性腎障害のリスクが低いというエビデンスは認められなかった.(オーストラリア国立保健医療研究評議会,ニュージーランド保健研究評議会から研究助成を受けた.PLUS 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02721654)