CIDEB の生殖細胞系列変異と肝疾患に対する防御効果
Germline Mutations in CIDEB and Protection against Liver Disease
N. Verweij and Others
膨大な人数を対象としたエクソームシーケンシングにより,肝硬変などのヒト疾患に対する防御に関連する,まれな蛋白質コード遺伝子バリアントを同定でき,新たな治療標的を発見するための戦略が得られる可能性がある.
多段階エクソームシーケンシングと遺伝子関連解析を行い,まれな蛋白質コードバリアントが肝臓の表現型に関連している遺伝子を同定した.関連の特性をさらに明らかにするために,in vitro 実験を行った.
多段階解析では,肝アミノトランスフェラーゼ値のデータを入手しえた 542,904 例,各種肝疾患患者 24,944 例,肝疾患を有しない対照者 490,636 例を対象とした.APOB,ABCB4,SLC30A10,TM6SF2 のまれなコードバリアントが,アミノトランスフェラーゼ値上昇と肝疾患リスク上昇に関連することが明らかになった.また,肝脂肪滴にみられる構造蛋白をコードする CIDEB のバリアントには,防御効果があることが明らかになった.CIDEB のまれな推定機能喪失バリアントとミスセンスバリアントの総量は(保因頻度は合わせて 0.7%),アラニンアミノトランスフェラーゼ値の低下に関連し(対立遺伝子あたりの β -1.24 U/L,95%信頼区間 [CI] -1.66~-0.83,P=4.8×10-9),あらゆる原因による肝疾患のオッズが 33%低いことに関連していた(対立遺伝子あたりのオッズ比 0.67,95% CI 0.57~0.79,P=9.9×10-7).CIDEB のまれなコードバリアントは,さまざまな原因,さまざまな重症度の肝疾患リスクが低いことに関連し,あらゆる原因による肝硬変は,対立遺伝子あたりのオッズ比が 0.50(95% CI 0.36~0.70)であった.肥満手術を受けた患者 3,599 例では,CIDEB のまれなコードバリアントは,非アルコール性脂肪性肝疾患の活動性スコア(0~8 で,スコアが高いほど重症であることを示す)が低いことに関連していた(対立遺伝子あたりのスコア単位に対する β -0.98,95% CI -1.54~-0.41).オレイン酸を投与したヒト肝細胞癌細胞株では,CIDEB を低分子干渉 RNA でノックダウンすることで,大きな肝脂肪滴の形成が予防された.
CIDEB のまれな生殖細胞系列変異は,肝疾患に対する顕著な防御効果を付与した.(リジェネロン ファーマシューティカルズ社から研究助成を受けた.)