August 11, 2022 Vol. 387 No. 6
再発または難治性の多発性骨髄腫に対するテクリスタマブ
Teclistamab in Relapsed or Refractory Multiple Myeloma
P. Moreau and Others
テクリスタマブ(teclistamab)は,T 細胞表面に発現する CD3 と,骨髄腫細胞表面に発現する B 細胞成熟抗原の両方を標的とする,T 細胞リダイレクト二重特異性抗体である.本試験の第 1 相用量設定パートで,テクリスタマブは,再発または難治性の多発性骨髄腫患者において有望な効果を示した.
今回の第 1・2 相試験では,免疫調節薬,プロテアソーム阻害薬,抗 CD38 抗体の 3 クラスの薬剤を含む,少なくとも 3 レジメンによる治療歴のある,再発または難治性の骨髄腫患者を登録した.テクリスタマブは,皮下注射で 0.06 mg/kg 体重,0.3 mg/kg と段階的に増量したあと,1.5 mg/kg を週 1 回投与した.主要エンドポイントは全奏効(部分奏効以上)とした.
テクリスタマブの投与を受けた 165 例のうち,77.6%が 3 クラスの薬剤に抵抗性の多発性骨髄腫であった(治療歴は中央値で 5 レジメン).追跡期間中央値 14.1 ヵ月の時点で,全奏効割合は 63.0%であり,65 例(39.4%)で完全奏効以上が得られた.44 例(26.7%)は微小残存病変(MRD)陰性であることが示され,完全奏効以上が得られた患者における MRD 陰性割合は 46%であった.奏効期間の中央値は 18.4 ヵ月(95%信頼区間 [CI] 14.9~推定不能),無増悪生存期間の中央値は 11.3 ヵ月(95% CI 8.8~17.1)であった.頻度の高かった有害事象は,サイトカイン放出症候群(患者の 72.1%に発現,グレード 3 は 0.6%,グレード 4 はなし),好中球減少症(70.9%,グレード 3 または 4 は 64.2%), 貧血(52.1%,グレード 3 または 4 は 37.0%),血小板減少症(40.0%,グレード 3 または 4 は 21.2%)などであった.感染の頻度も高かった(76.4%,グレード 3 または 4 は 44.8%).神経毒性イベントは 24 例(14.5%)に発現し,うち 5 例(3.0%)は免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(すべてグレード 1 または 2)であった.
3 クラスの薬剤への曝露歴のある再発または難治性の多発性骨髄腫患者において,テクリスタマブにより,高い割合で深く持続する奏効が得られた.血球減少症と感染の頻度が高く,T 細胞のリダイレクトと一致する毒性作用は,大部分がグレード 1 または 2 であった.(ヤンセン・リサーチ・アンド・ディベロップメント社から研究助成を受けた.MajesTEC-1 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03145181,NCT04557098)