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August 18, 2022 Vol. 387 No. 7

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急性肝炎とヒトアデノウイルス感染症に罹患した小児のケースシリーズ
A Case Series of Children with Acute Hepatitis and Human Adenovirus Infection

L.H. Gutierrez Sanchez and Others

背景

ヒトアデノウイルスは,健康な小児において,主に呼吸器,胃腸,結膜の自然軽快する感染症を引き起こす.2021 年後半から 2022 年前半にかけて,急性肝炎とヒトアデノウイルス血症に罹患した,生来健康であった小児が複数同定された.

方 法

2021 年 10 月 1 日~2022 年 2 月 28 日にアラバマ小児病院に入院した小児(18 歳未満)について,『国際疾病分類第 10 版(ICD-10)』の診断コードをもとに,急性肝炎に該当する症例を同定した.そのうち,全血定量的 PCR 検査でヒトアデノウイルス陽性であった小児を,今回のケースシリーズに含めた.診療録から,人口統計学的特性,臨床特性,臨床検査,治療に関するデータを入手した.診断の確認とヒトアデノウイルスのタイピングのため,血液の残余検体を送付した.

結 果

急性肝炎が同定された 15 例のうち,6 例(40%)では原因が同定され,9 例(60%)では不明であった.原因不明の急性肝炎を有する 9 例中 8 例(89%)は,ヒトアデノウイルス陽性であった.この 8 例に,経過観察のために当施設に紹介された 1 例を追加した 9 例を,今回のケースシリーズに含めた(年齢中央値 2 歳 11 ヵ月,範囲 1 歳 1 ヵ月~6 歳 5 ヵ月).肝生検では 6 例に軽度~中等度の活動性肝炎が確認され,胆汁うっ滞が認められる例も認められない例もあったが,免疫組織学的検査または電子顕微鏡検査でヒトアデノウイルスの存在を示す所見は認められなかった.この 6 例の肝組織の PCR 検査では,3 例(50%)がヒトアデノウイルス陽性であった.5 例の検体のシーケンシングを行ったところ,3 つの異なるヒトアデノウイルス 41 型ヘキソン変異が同定された.2 例が肝移植を受け,残りの 7 例は支持療法を受けて回復した.

結 論

2021 年 10 月 1 日~2022 年 2 月 28 日にアラバマ小児病院に入院した急性肝炎の小児において,その大部分にヒトアデノウイルス血症が認められたが,ヒトアデノウイルスが原因であったかどうかは依然明らかになっていない.シーケンシングの結果からは,ヒトアデノウイルスが病因であったとしても,単一株による集団感染ではないことが示唆される.(米国疾病管理予防センターから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2022; 387 : 620 - 30. )