August 18, 2022 Vol. 387 No. 7
原因不明の急性肝炎に罹患した小児の臨床スペクトラム
Clinical Spectrum of Children with Acute Hepatitis of Unknown Cause
C. Kelgeri and Others
2022 年 1 月以降,小児における原因不明の急性肝炎の症例報告が増加している.報告は複数の大陸でなされているが,大半が英国である.1 つまたは複数の病原因子を同定するための調査が進行中である.
2022 年 1 月 1 日~4 月 11 日に英国の 1 ヵ所の小児肝移植センターに紹介された小児の後ろ向き研究を行った.10 歳以下で,英国健康安全保障庁(UKHSA)の急性肝炎の確定症例の定義を満たす小児を対象とした.確定症例の定義は,血清アミノトランスフェラーゼ値が 500 IU/L 超であり,A 型~E 型肝炎ではないこと,代謝的,遺伝的,先天的,機械的な原因によるものではないこととした.診療録,人口統計学的特性,臨床像,肝生化学的検査結果,血清学的検査結果,肝指向性ウイルス・その他のウイルスの分子検査結果をレビューし,放射線学的転帰,臨床転帰を検討した.臨床転帰は,症状改善,肝移植,死亡の 3 つに分類した.
急性肝炎の確定症例の定義を満たしたのは 44 例で,その大部分は生来健康であった.年齢中央値は 4 歳(範囲 1~7)であった.頻度の高かった受診時の症状は,黄疸(93%),嘔吐(54%),下痢(32%)であった.分子検査を受けた 30 例中 27 例(90%)がヒトアデノウイルス陽性であった.6 例(14%)が劇症肝不全を発症し,その全例が肝移植を受けた.死亡例はなかった.肝移植を受けた 6 例を含む全例が自宅退院した.
原因不明の急性肝炎に罹患した小児 44 例のケースシリーズにおいて,その大部分からヒトアデノウイルスが分離されたが,本疾患の病因におけるその役割は確立されなかった.