September 1, 2022 Vol. 387 No. 9
米国における HIV に対する妊娠中のドルテグラビル投与と現行のレジメンとの比較
Dolutegravir in Pregnancy as Compared with Current HIV Regimens in the United States
K. Patel and Others
妊娠中のヒト免疫不全ウイルス 1 型(HIV-1)感染に対するドルテグラビルベースの抗レトロウイルス療法(ART)について,とくに妊娠前に開始された場合の有効性と安全性を,欧米で一般的に用いられているほかの ART レジメンと比較したデータは限られている.
「小児 HIV/AIDS コホート研究」で,妊娠中の初回 ART レジメンに,ドルテグラビル,アタザナビル+リトナビル,ダルナビル+リトナビル,経口リルピビリン,ラルテグラビル,エルビテグラビル+コビシスタットのいずれかが用いられた HIV-1 感染者の妊娠を評価した.分娩時のウイルス抑制と,児が早産,低出生体重,在胎不当過小(SGA)となるリスクを,非ドルテグラビルベースの各 ART レジメンと,ドルテグラビルベースの ART レジメンとで比較した.結果の精度を向上させるために,「スイス母子 HIV コホート研究」の参加者を加えた副次解析を行った.
解析の対象とした妊娠の内訳は,初回 ART レジメンとしてドルテグラビルの投与を受けた参加者の妊娠が 120 件,同様に,アタザナビル+リトナビル 464 件,ダルナビル+リトナビル 185 件,リルピビリン 243 件,ラルテグラビル 86 件,エルビテグラビル+コビシスタット 159 件であった.妊娠時の年齢の中央値は 29 歳で,妊娠の 51%は,妊娠前に ART が開始された参加者の妊娠であった.分娩時にウイルス抑制が認められた割合は,ドルテグラビルの投与を受けた参加者の妊娠では 96.7%であり,アタザナビル+リトナビルでは 84.0%,ラルテグラビルでは 89.2%,エルビテグラビル+コビシスタットでは 89.8%であった(補正後の,ドルテグラビルとのリスク差はそれぞれ -13.0 パーセントポイント [95%信頼区間 {CI} -17.0~-6.1],-17.0 パーセントポイント [95% CI -27.0~-2.4],-7.0パーセントポイント [95% CI -13.3~-0.0]).観察されたリスクは,早産が 13.6~17.6%であった.児が早産,低出生体重,SGA となる補正後のリスクに,非ドルテグラビルベースの ART と,ドルテグラビルとのあいだで大きな差はなかった.副次解析の結果も同様であった.
アタザナビル+リトナビルとラルテグラビルは,ドルテグラビルと比較して,分娩時のウイルス抑制の頻度が低いことと関連した.今回のサンプル数は少なかったが,ドルテグラビルベースの ART と,非ドルテグラビルベースの ART とのあいだで,有害な出生転帰に明確な差は認められなかった.(ユニス・ケネディ・シュライバー米国国立小児保健・人間発達研究所ほかから研究助成を受けた.)