March 14, 2024 Vol. 390 No. 11
母体用 RS ウイルス融合前 F 蛋白ベースワクチン ― 早産とその他の転帰
RSV Prefusion F Protein–Based Maternal Vaccine — Preterm Birth and Other Outcomes
I. Dieussaert and Others
妊娠中の RS ウイルス(respiratory syncytial virus:RSV)ワクチン接種は,乳児を RSV 疾患から保護する可能性がある.ワクチン候補である,母体用 RSV 融合前 F 蛋白ベースワクチン(RSVPreF3-Mat)の有効性と安全性に関するデータが必要である.
RSVPreF3-Mat の有効性と安全性を評価するため,18~49 歳の妊娠女性を対象として第 3 相試験を行った.妊娠女性を,妊娠 24 週 0 日~34 週 0 日のあいだに RSVPreF3-Mat を接種する群と,プラセボを接種する群に 2:1 の割合で無作為に割り付けた.主要転帰は,出生~生後 6 ヵ月の乳児における医学的に評価されたすべての RSV 関連下気道疾患および重症 RSV 関連下気道疾患と,出生~生後 12 ヵ月の乳児における安全性とした.ワクチン群の早産リスクがプラセボ群よりも高いことが確認されたため,登録とワクチン接種を早期に中止し,早産に関する安全性シグナルの探索的解析を行った.
解析対象は妊娠女性 5,328 例,乳児 5,233 例であった.登録が早期に中止されたため,妊娠女性約 10,000 例とその乳児という目標登録数には達しなかった.ワクチン群の乳児 3,426 例とプラセボ群の乳児 1,711 例が,出生から生後 6 ヵ月まで追跡された.医学的に評価されたすべての RSV 関連下気道疾患は,ワクチン群では 16 例,プラセボ群では 24 例に発生し(ワクチン有効率 65.5%,95%信用区間 37.5~82.0),医学的に評価された重症 RSV 関連下気道疾患は,それぞれ 8 例と 14 例に発生した(ワクチン有効率 69.0%,95%信用区間 33.0~87.6).早産は,ワクチン群の 6.8%(3,494 例中 237 例),プラセボ群の 4.9%(1,739 例中 86 例)に発生し(相対リスク 1.37,95%信頼区間 [CI] 1.08~1.74,P=0.01),新生児死亡はそれぞれ 0.4%(3,494 例中 13 例)と 0.2%(1,739 例中 3 例)に発生した(相対リスク 2.16,95% CI 0.62~7.56,P=0.23).新生児死亡率の差はおそらく,ワクチン群のほうが早産の発生率が高いことに起因すると考えられた.その他の安全性シグナルは認められなかった.
安全性の懸念から登録が早期に中止されたこの試験からは,母体用 RSV ワクチン候補を接種した場合,プラセボを接種した場合よりも,乳児における医学的に評価されたすべての RSV 関連下気道疾患および重症 RSV 関連下気道疾患のリスクは低いが,早産のリスクは高いことが示唆された.(グラクソ・スミスクライン・バイオロジカルズ社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04605159)