マラリア予防のためのモノクローナル抗体の皮下投与
Subcutaneous Administration of a Monoclonal Antibody to Prevent Malaria
K. Kayentao and Others
モノクローナル抗体 L9LS の皮下投与は,成人を対象とした第 1 相試験で,コントロール下での熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)感染を防御した.熱帯熱マラリア原虫の流行地域で,小児における感染を,モノクローナル抗体の皮下投与により防御できるかは明らかでない.
マリで行った第 2 相試験で,6 ヵ月間のマラリア流行期における,6~10 歳の小児に対する L9LS の皮下投与の安全性と有効性を評価した.試験のパート A では,成人で 3 用量の安全性を評価し,次に小児で 2 用量の安全性を評価した.パート B では,小児を,L9LS 150 mg を投与する群,300 mg を投与する群,プラセボを投与する群に 1:1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要有効性エンドポイントは初回熱帯熱マラリア原虫感染とし,生存時間(time-to-event)解析で評価した.感染を検出するため,血液塗抹検査を少なくとも 2 週ごとに,24 週間行った.副次的有効性エンドポイントは臨床的マラリアの初回エピソードとし,生存時間解析で評価した.
用量漸増パート(パート A)では,安全性の懸念は認められなかった.パート B では,小児 225 例が無作為化され,各群に 75 例が割り付けられた.安全性の懸念は認められなかった.熱帯熱マラリア原虫感染は,150 mg 群では 36 例(48%),300 mg 群では 30 例(40%),プラセボ群では 61 例(81%)に発生した.L9LS の,プラセボと比較した熱帯熱マラリア原虫感染に対する有効率は,150 mg で 66%(補正後の 95%信頼区間 [CI] 45~79),300 mg で 70%(補正後の 95% CI 50~82)であった(両比較について P<0.001).臨床的マラリアに対する有効率は,150 mg で 67%(補正後の 95% CI 39~82),300 mg で 77%(補正後の 95% CI 55~89)であった(両比較について P<0.001).
小児に対する L9LS の皮下投与は,6 ヵ月の期間中,熱帯熱マラリア原虫感染と臨床的マラリアに対する防御効果を示した.(米国国立アレルギー・感染症研究所から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT05304611)