希少疾患の診断に用いるゲノムシーケンシング
Genome Sequencing for Diagnosing Rare Diseases
M.H. Wojcik and Others
希少疾患を引き起こす遺伝子バリアントは,エクソームシーケンシングなどの広範な検査を行っても明らかにならないことがある.とくに検査陰性の場合に,その後行うゲノムシーケンシングの診断能は,依然として明らかでない.
単一遺伝子性希少疾患が疑われ,遺伝子検査では診断が明らかにならなかった,多様な表現型を有する家族において,ゲノムの配列決定と解析を行った.独立した臨床施設の再現コホートにおいても,ゲノムの配列決定と解析を行った.
822 家族(最初のコホート 744 家族,再現コホート 78 家族)のゲノムシーケンシングを行い,744 家族中 218 家族(29.3%)で分子診断を行った.この 218 家族中,61 家族(28.0%,最初のコホートの家族の 8.2%)は,同定にゲノムシーケンシングを必要とするバリアント,たとえばコーディングバリアント,イントロンバリアント,小さな構造のバリアント,コピー数変化のない逆位,複雑な再構成,タンデムリピート伸長を有していた.過去のエクソームシーケンシングでは陰性で,その後分子診断がなされた 148 家族のうち,大部分(63.5%)では,バリアントはエクソーム配列データを用いて検出可能であったことが示され,53.4%はエクソーム配列データの再解析により検出され,10.8%はエクソーム配列データにコピー数バリアント同定などの解析法を追加することで検出された.再現コホートでも同様の結果が得られ,分子診断がなされた 18 家族では,33%(再現コホートの 8%)がゲノムシーケンシングを必要とした.これらの知見は,研究と臨床の両方に適用可能であることが示された.
遺伝子検査歴のある人の大規模かつ多様な研究コホート,および小規模な臨床コホートにおいて,ゲノムシーケンシングの診断能は約 8%であり,検出されたゲノムには,エクソームシーケンシングやその他の技術では検出されなかった複数種類の病原性変異が含まれていた.(米国国立ヒトゲノム研究所ほかから研究助成を受けた.)