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June 6, 2024 Vol. 390 No. 21

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CEP290 関連網膜変性疾患に対するゲノム編集
Gene Editing for CEP290-Associated Retinal Degeneration

E.A. Pierce and Others

背景

CEP290 関連遺伝性網膜変性疾患は,CEP290 の病的バリアントにより,早期に重度の視覚障害をきたす疾患である.EDIT-101 は,CEP290 のイントロン 26 に損傷を与える特異的バリアント(IVS26 バリアント)に起因する遺伝性網膜変性疾患を治療するためにデザインされた,「クラスター化された,規則的に間隔があいた短い回文構造の繰り返し(CRISPR)」–CRISPR 関連蛋白質 9(Cas9)ゲノム編集複合体である.

方 法

第 1・2 相非盲検単回投与用量漸増試験を行い,ホモ接合性または複合ヘテロ接合性の IVS26 バリアントに起因する,CEP290 関連遺伝性網膜変性疾患を有する 3 歳以上の被験者の,障害が大きいほうの眼(試験眼)に EDIT-101 を網膜下注射した.主要転帰は,有害事象,用量制限毒性などの安全性とした.重要な副次的有効性転帰は,最高矯正視力のベースラインからの変化量,全視野刺激試験(FST)を用いて求めた網膜感度,オラ–ビジュアルナビゲーションチャレンジ(VNC)移動性試験のスコア,視覚関連 QOL スコアとした.視覚関連 QOL スコアは,成人は米国国立眼研究所視機能質問票 25(NEI VFQ-25)のスコア,小児は小児用視機能質問票(CVFQ)のスコアとした.

結 果

EDIT-101 は,17~63 歳(中央値 37 歳)の成人 12 例に,低用量(2 例),中用量(5 例),高用量(5 例)で投与され,小児は,9 歳と 14 歳の 2 例に中用量で投与された.ベースラインにおける試験眼の最高矯正視力の中央値は,最小視角の常用対数(logMAR)で 2.4(範囲 3.9~0.6)であった.治療または手技に関連する重篤な有害事象や,用量制限毒性は記録されなかった.FST で評価した錐体を介した視覚に,ベースラインからの意味のある改善が 6 例に認められ,うち 5 例では,その他の重要な副次的転帰が 1 つ以上改善した.最高矯正視力,FST で測定した赤色光に対する感度,移動性試験のスコアのいずれかに,ベースラインからの意味のある改善が 9 例(64%)に認められた.視覚関連 QOL スコアには,ベースラインからの意味のある改善が 6 例に認められた.

結 論

今回の小規模第 1・2 相試験で,EDIT-101 の安全性プロファイルと,投与後の光受容体機能の改善が認められたことから,CEP290 の IVS26 バリアント,およびその他の遺伝的原因による遺伝性網膜変性疾患の治療に向けた,CRISPR-Cas9 による生体内ゲノム編集のさらなる研究を支持している.(エディタス メディシン社ほかから研究助成を受けた.BRILLIANCE 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03872479)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2024; 390 : 1972 - 84. )