狭小弁輪患者に対する自己拡張型 TAVR とバルーン拡張型 TAVR との比較
Self-Expanding or Balloon-Expandable TAVR in Patients with a Small Aortic Annulus
H.C. Herrmann and Others
狭小弁輪を伴う重症大動脈弁狭窄症患者は,経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)後に,弁の血行動態障害と,それに関連する心血管系の有害な臨床転帰のリスクがある.
症候性重症大動脈弁狭窄症を有し,大動脈弁輪面積 430 mm2 以下の患者を,自己拡張型弁(弁輪上部に人工弁が設置される)による TAVR を行う群と,バルーン拡張型弁による TAVR を行う群に,1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要エンドポイントは,死亡,障害をもたらす脳卒中,心不全による再入院の複合(非劣性の検定)と,生体弁の機能不全の複合エンドポイント(優越性の検定)の 2 つとし,12 ヵ月間評価した.
13 ヵ国 83 施設で,計 716 例が治療を受けた(平均年齢 80 歳,女性 87%,米国胸部外科学会死亡リスク予測値の平均 3.3%).12 ヵ月間に,死亡,障害をもたらす脳卒中,心不全による再入院のいずれかが発生した患者の割合の Kaplan–Meier 推定値は,自己拡張型弁群 9.4%,バルーン拡張型弁群 10.6%であった(差 -1.2 パーセントポイント,90%信頼区間 [CI] -4.9~2.5,非劣性の P<0.001).12 ヵ月間に生体弁の機能不全が発生した患者の割合の Kaplan–Meier 推定値は,自己拡張型弁群 9.4%,バルーン拡張型弁群 41.6%であった(差 -32.2 パーセントポイント,95% CI -38.7~-25.6,優越性の P<0.001).12 ヵ月の時点での大動脈弁圧較差の平均値は,自己拡張型弁群 7.7 mmHg,バルーン拡張型弁群 15.7 mmHg であり,その他の副次的エンドポイントの 12 ヵ月間の値はそれぞれ,有効弁口面積の平均値が 1.99 cm2 と 1.50 cm2,弁の血行動態的・構造的機能不全が発生した患者の割合が 3.5%と 32.8%,生体弁の機能不全が発生した女性の割合が 10.2%と 43.3%であった(すべて P<0.001).30 日の時点で中等度または重度の人工弁患者不適合が認められた患者の割合は,自己拡張型弁群 11.2%,バルーン拡張型弁群 35.3%であった(P<0.001).主要な安全性エンドポイントは 2 群で同程度と思われた.
狭小弁輪を伴う重症大動脈弁狭窄症を有し,TAVR を受けた患者において,弁輪上部に人工弁が設置される自己拡張型弁は,バルーン拡張型弁に対して,12 ヵ月間の臨床転帰に関して非劣性を示し,12 ヵ月間の生体弁の機能不全に関して優越性を示した.(メドトロニック社から研究助成を受けた.SMART 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04722250)