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June 20, 2024 Vol. 390 No. 23

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APOE3 のクライストチャーチバリアントのヘテロ接合体と常染色体顕性遺伝性アルツハイマー病
APOE3 Christchurch Heterozygosity and Autosomal Dominant Alzheimer’s Disease

Y.T. Quiroz and Others

背景

APOEPSEN1(それぞれアポリポ蛋白 E とプレセニリン 1 をコード)のバリアントは,アルツハイマー病のリスクを変化させる.われわれは以前,PSEN1E280A バリアントに起因する常染色体顕性遺伝性アルツハイマー病を有し,アポリポ蛋白 E3 のクライストチャーチバリアント(APOE3Ch)を 2 コピー有する 1 例における,認知障害の発症遅延を報告した.APOE3Ch バリアントのヘテロ接合体は,認知障害の発症年齢に影響を及ぼす可能性がある.この仮説を PSEN1E280A バリアントの保有率が高い集団で評価した.

方 法

コロンビアのアンティオキア出身の 1 家系における PSEN1E280A バリアント保有者 1,077 例のうち,APOE3Ch バリアントを 1 コピー有する 27 例のデータを解析して認知障害および認知症の発症年齢を推定し,APOE3Ch バリアントを有しない人と比較した.2 例に脳画像検査,4 例に剖検を行った.

結 果

認知障害の発症年齢の中央値は,PSEN1E280A バリアントを保有する APOE3Ch バリアントのヘテロ接合体を有する人では 52 歳(95%信頼区間 [CI] 51~58)であったのに対し,マッチさせた PSEN1E280A バリアント保有 APOE3Ch バリアント陰性者のグループでは 47 歳(95% CI 47~49)であった.脳画像検査を受けた PSEN1E280A バリアント保有 APOE3Ch バリアント陽性者 2 例では,18F-フルオロデオキシグルコース陽電子放射断層撮影(PET)イメージングにより,アルツハイマー病に典型的に関与する領域での代謝活性が比較的維持されていることが示された.このうち 1 例に行った 18F-フロルタウシピル(flortaucipir)PET イメージングでは,この家系の典型的な年齢で認知障害を発症した PSEN1E280A バリアント保有者と比較して,タウの蓄積は限定的であった.PSEN1E280A バリアント保有 APOE3Ch バリアント陽性者 4 例から得られた剖検検体の検討では,血管アミロイドの病理学的特徴が,PSEN1E280A バリアント保有 APOE3Ch バリアント陰性者の検体と比較して少ないことが示された.

結 論

臨床データから,常染色体顕性遺伝性アルツハイマー病の有病率が高い家系の APOE3Ch バリアントのヘテロ接合体を有する人では,認知障害の発症が遅延することが裏付けられた.(オープン フィランソロピー,グッド ベンチャーズほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2024; 390 : 2156 - 64. )