February 22, 2024 Vol. 390 No. 8
アルツハイマー病の診断に先行する 20 年間におけるバイオマーカー変化
Biomarker Changes during 20 Years Preceding Alzheimer’s Disease
J. Jia and Others
認知機能が正常な状態から,孤発性アルツハイマー病と診断されるまでに生じるバイオマーカーの変化について,縦断研究での広範な検討はなされていない.
2000 年 1 月~2020 年 12 月に,中国認知機能・加齢研究(China COAST)の参加者のうち認知機能が正常であった人のアルツハイマー病のバイオマーカーに関する多施設共同コホート内症例対照研究を行った.このサブグループに,脳脊髄液(以下髄液)検査,認知機能評価,脳画像検査を 2~3 年間隔で行った.アルツハイマー病を発症した参加者 648 例を,認知機能正常を維持した参加者 648 例とマッチさせ,この 2 群における髄液中の生化学マーカー濃度,認知機能検査,画像検査の経時的な軌跡を分析した.
追跡期間の中央値は 19.9 年(四分位範囲 19.5~20.2)であった.アルツハイマー病群の髄液・画像バイオマーカーの値は,診断前の次の時点で,認知機能正常群の値と乖離した:アミロイドβ(Aβ)42 は 18 年前,Aβ42/Aβ40 比は 14 年前,リン酸化タウ 181 は 11 年前,総タウは 10 年前,ニューロフィラメント軽鎖は 9 年前,海馬体積は 8 年前,認知機能低下は 6 年前.認知障害の進行に伴うアルツハイマー病群の髄液中バイオマーカー濃度の変化は,最初は急速で,その後緩徐になった.
中国人参加者における孤発性アルツハイマー病の臨床診断に先行する 20 年間の研究で,髄液中バイオマーカーの経時的変化,認知機能正常の状態を維持したマッチさせた参加者群の値と乖離する時点,各バイオマーカーが異常値を示す時間的順序が観察された.(中国国家自然科学基金委員会 重要プロジェクトほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03653156)