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October 17, 2024 Vol. 391 No. 15

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HIV 感染ドナーからの腎移植の安全性
Safety of Kidney Transplantation from Donors with HIV

C.M. Durand and Others

背景

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染ドナーから HIV 感染レシピエントへの腎移植は,新たな実践である.これは米国議会のHIV 臓器提供方針公平法のもと,2016 年から行われており,現時点では研究目的でのみ承認されている.米国保健福祉省はこの処置を臨床診療に拡大することを検討しているが,データは,HIV 非感染ドナーが対照となっていない,小規模の症例シリーズに限られている.

方 法

米国の 26 施設で行われた観察研究において,HIV 感染死体ドナーから HIV 感染レシピエントへの腎移植を,HIV 非感染死体ドナーから HIV 感染レシピエントへの腎移植と比較した.主要転帰は,安全性イベント(全死因死亡,移植腎喪失,重篤な有害事象,HIV のブレイクスルー感染,HIV 治療失敗の持続,日和見感染の複合)とし,非劣性を評価した(95%信頼区間 [CI] の上限のマージン 3.00).副次的転帰は,全生存,移植腎喪失を伴わない生存,拒絶反応,感染,癌,HIV 重複感染などとした.

結 果

移植候補者 408 例を登録し,うち 198 例が死体ドナーから腎臓の提供を受けた.内訳は,99 例が HIV 感染ドナーからの提供,99 例が HIV 非感染ドナーからの提供であった.主要複合転帰の補正ハザード比は 1.00(95% CI 0.73~1.38)であり,非劣性が示された.次の副次的転帰は,ドナーの HIV 感染の有無にかかわらず同程度であった:1 年全生存率(94% 対 95%),3 年全生存率(85% 対 87%),1 年の時点での移植腎喪失を伴わない生存率(93% 対 90%),3 年の時点での移植腎喪失を伴わない生存率(84% 対 81%),1 年の時点での拒絶反応発生率(13% 対 21%),3 年の時点での拒絶反応発生率(21% 対 24%).重篤な有害事象の発現率と,感染,手術合併症/血管合併症,癌の発生率は両群で同程度であった.HIV のブレイクスルー感染の発生率は,HIV 感染ドナー腎のレシピエントのほうが高く(発生率比 3.14,95% CI 1.02~9.63),この群で配列データが得られた 58 例のうち,1 例は HIV 重複感染の可能性があった.HIV 治療失敗の持続は認められなかった.

結 論

HIV 感染者に対する腎移植に関するこの観察研究では,HIV 感染ドナーからの移植は,HIV 非感染ドナーからの移植に対して非劣性であると思われた.(米国国立アレルギー・感染症研究所から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03500315)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2024; 391 : 1390 - 401. )