December 5, 2024 Vol. 391 No. 22
出生前の無細胞 DNA シーケンシングと母体のがんの偶発的発見
Prenatal cfDNA Sequencing and Incidental Detection of Maternal Cancer
A.E. Turriff and Others
胎児染色体異数性をスクリーニングするための無細胞 DNA(cfDNA)シーケンシング解析では,母体のがんが偶発的に発見される可能性がある.がんを有する可能性がもっとも高い妊娠者を同定できる DNA シーケンシングパターンやその他のバイオマーカーを明らかにし,追跡に最良の方法を決定するためには,さらなるデータが必要である.
現在進行中の研究で,がんの徴候・症状を認識していない妊娠中または出産後の人で,北米の 12 の民間検査機関のいずれかから受け取った臨床 cfDNA シーケンシングの結果が,「異常」または「報告不能」(胎児染色体異数性の状態が評価できない)であった人を対象に,がんスクリーニングを実施した.スクリーニングには,迅速全身 MRI,臨床検査,ゲノムワイドプラットフォームを用いた研究目的の標準化 cfDNA シーケンシングなどの,同一のプロトコルを用いた.主要転帰は,初回のがんスクリーニング評価で参加者にがんが存在することとした.副次的解析では検査の精度などを検討した.
最初のコホートの 107 例中 52 例(48.6%)にがんが存在した.不顕性がんの発見に対する全身 MRI の感度は 98.0%,特異度は 88.5%であった.がん患者の同定における身体診察と臨床検査の有用性は限定的であった.研究目的のシーケンシングにより,複数(3 本以上)の染色体のコピー数増加とコピー数減少の両方が,49 例に認められた.このパターンをもつ参加者の 47 例(95.9%)にがんが存在した.染色体増幅(複数のトリソミー)のみ,または染色体欠失(1 種類以上のモノソミー)のみのパターンは,子宮筋腫などの非悪性疾患を有する患者に認められた.
この試験では,臨床 cfDNA シーケンシングの結果が「異常」または「報告不能」であった参加者の 48.6%が,不顕性がんを有していた.出生前スクリーニングの DNA シーケンシングにおける不顕性がんを示唆するパターンについては,さらなる研究が必要である.(米国国立衛生研究所 所内研究プログラムから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04049604)