December 5, 2024 Vol. 391 No. 22
転移性乳癌に対する内分泌療法後のトラスツズマブ デルクステカン
Trastuzumab Deruxtecan after Endocrine Therapy in Metastatic Breast Cancer
A. Bardia and Others
ホルモン受容体陽性転移性乳癌患者は,内分泌療法をベースとする治療を 1 種類以上受けると予後が悪化する.トラスツズマブ デルクステカンは,ヒト上皮増殖因子受容体 2(HER2)低発現転移性乳癌で化学療法を受けた患者に対する有効性が示されている.
HER2 低発現(免疫組織化学的 [IHC] 解析スコア 1+または 2+で,in situ ハイブリダイゼーション法陰性)または HER2 超低発現(IHC スコア 0 で,膜染色が認められる)のホルモン受容体陽性転移性乳癌で,転移性乳癌に対して内分泌療法をベースとする 1 種類以上の治療歴があり,化学療法歴はない患者を対象に,第 3 相多施設共同非盲検試験を行った.患者を,トラスツズマブ デルクステカンを投与する群と,医師が選択した化学療法を行う群に 1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要評価項目は,HER2 低発現患者の無増悪生存(盲検下独立中央判定に基づく)とした.副次的評価項目は,無作為化された患者全例の無増悪生存や,全生存,安全性などとした.
無作為化された 866 例のうち,713 例は HER2 低発現,153 例は HER2 超低発現の乳癌であった.HER2 低発現患者の無増悪生存期間の中央値は,トラスツズマブ デルクステカン群で 13.2 ヵ月(95%信頼区間 [CI] 11.4~15.2),化学療法群で 8.1 ヵ月(95% CI 7.0~9.0)であり(病勢進行または死亡のハザード比 0.62,95% CI 0.51~0.74,P<0.001),探索的 HER2 超低発現患者集団の結果とも一致した.全生存のデータは揃っていなかった.グレード 3 以上の有害事象は,トラスツズマブ デルクステカン群の 52.8%と,化学療法群の 44.4%に発現した.独立判定委員会が薬剤に関連すると判定した間質性肺疾患または肺臓炎は,それぞれ 49 例(11.3%,3 件はグレード 5)と 1 例(0.2%,グレード 2)に発現した.
ホルモン受容体陽性 HER2 低発現または HER2 超低発現の転移性乳癌で,内分泌療法をベースとする 1 種類以上の治療歴がある患者のうち,トラスツズマブ デルクステカンを投与した患者では,無増悪生存期間が化学療法を行った患者よりも長かった.新たな安全性シグナルは確認されなかった.(アストラゼネカ社,第一三共社から研究助成を受けた.DESTINY-Breast06 試 験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04494425)