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August 1, 2024 Vol. 391 No. 5

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ポドサイト障害におけるネフリンを標的とする自己抗体
Autoantibodies Targeting Nephrin in Podocytopathies

F.E. Hengel and Others

背景

ネフローゼ症候群を引き起こす免疫介在性のポドサイト障害には,小児の特発性ネフローゼ症候群に加えて,成人の微小変化型ネフローゼ症候群,原発性巣状分節性糸球体硬化症がある.微小変化型ネフローゼ症候群患者でネフリンを標的とする自己抗体が発見されているが,その臨床上の役割,病態生理学的役割は不明である.

方 法

多施設共同研究を行い,微小変化型ネフローゼ症候群,巣状分節性糸球体硬化症,膜性腎症,IgA 腎症,抗好中球細胞質抗体関連糸球体腎炎,ループス腎炎などの糸球体疾患の成人,特発性ネフローゼ症候群の小児,対照において,抗ネフリン自己抗体を解析した.遺伝子組換えマウスネフリンで能動免疫した実験マウスモデルも作製した.

結 果

患者 539 例(成人 357 例,小児 182 例),対照 117 例を組み入れた.成人では,抗ネフリン自己抗体は,微小変化型ネフローゼ症候群の 105 例中 46 例(44%),原発性巣状分節性糸球体硬化症の 74 例中 7 例(9%)に認められ,それ以外の疾患ではほとんど認められなかった.特発性ネフローゼ症候群の小児では,抗ネフリン自己抗体は 182 例中 94 例(52%)で検出可能であった.免疫抑制療法を受けておらず,疾患活動性の高かった微小変化型ネフローゼ症候群または特発性ネフローゼ症候群の患者のサブグループでは,抗ネフリン自己抗体の保有率はそれぞれ 69%と 90%と高かった.研究組入れ時と追跡期間中の抗ネフリン自己抗体値は疾患活動性と相関していた.マウスでは,実験的な免疫付与により,ネフローゼ症候群,微小変化型ネフローゼ症候群様の表現型,ポドサイトスリット膜への IgG の局在,ネフリンのリン酸化,重度の細胞骨格変化が誘導された.

結 論

この研究では,抗ネフリン自己抗体は,微小変化型ネフローゼ症候群または特発性ネフローゼ症候群の患者の血中に認められる頻度が高く,疾患活動性のマーカーであると思われた.これらの自己抗体がスリット膜で結合することで,ポドサイト障害とネフローゼ症候群が惹起された.これは,その病態生理学的意義を示している.(ドイツ研究振興協会ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2024; 391 : 422 - 33. )