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August 8, 2024 Vol. 391 No. 6

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早期発症の重症胎児・新生児溶血性疾患に対するニポカリマブ
Nipocalimab in Early-Onset Severe Hemolytic Disease of the Fetus and Newborn

K.J. Moise, Jr., and Others

背景

早期発症の重症胎児・新生児溶血性疾患(HDFN)では,母体の抗赤血球 IgG 同種抗体が経胎盤的に胎児に移行することで,胎児貧血が引き起こされる.胎児貧血による胎児水腫,胎児死亡を回避するために,リスクの高い胎児輸血が行われる.胎児性 Fc 受容体阻害薬であるニポカリマブ(nipocalimab)は,IgG の経胎盤的移行を阻害し,母体の IgG 濃度を低下させる.

方 法

国際共同非盲検単群第 2 相試験で,早期発症の重症 HDFN の再発リスクが高い妊娠者を対象として,妊娠 14~35 週にニポカリマブ(30 mg/kg 体重/週または 45 mg/kg 体重/週)を静脈内投与する治療を評価した.主要エンドポイントは,胎児輸血なしでの在胎 32 週以降の生児出生とし,ヒストリカルコホートの値(0%)と比較した(臨床的に意味のある差を 10%とした).

結 果

胎児輸血なしでの在胎 32 週以降の生児出生は,この試験の対象となった妊娠 13 件中 7 件(54%,95%信頼区間 25~81)で発生した.胎児水腫を発症した例はなく,6 例(46%)は出生前輸血,新生児輸血のいずれも受けなかった.6 例が胎児輸血を受け,施行時期は 5 例が在胎 24 週以降,1 例が在胎 22 週 5 日(その後死亡)であった.妊娠 12 件で生児出生が得られた.分娩時の在胎期間の中央値は 36 週 4 日であった.生児 12 例のうち,1 例が交換輸血 1 回と単純輸血 1 回を受け,5 例が単純輸血のみを受けた.母体の検体中,臍帯血中の同種抗体力価と IgG 濃度に,ニポカリマブ投与に関連する低下が認められた.母体,小児のいずれにも,まれな感染症はみられなかった.重篤な有害事象は,HDFN,妊娠,未熟性に関連するものであった.

結 論

早期発症の重症 HDFN のリスクが高い妊娠において,ニポカリマブの投与は,胎児貧血および胎児輸血を,ヒストリカルコホートの値と比較して遅延または予防した.(ヤンセン・リサーチ・アンド・ディベロップメント社から研究助成を受けた.UNITY 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03842189)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2024; 391 : 526 - 37. )