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August 15, 2024 Vol. 391 No. 7

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発話のための高精度・高速較正の神経補綴装置
An Accurate and Rapidly Calibrating Speech Neuroprosthesis

N.S. Card and Others

背景

ブレインコンピュータインターフェース(BCI)は,発話意図に伴う皮質活動をコンピュータ画面上の文字に変換することで,麻痺のある人のコミュニケーションを可能にする.BCI を用いたコミュニケーションは,相当な訓練が必要であることと,精度に限界があることから,使用が限られている.

方 法

四肢麻痺と重度の構音障害を伴う筋萎縮性側索硬化症(ALS)を有する 45 歳男性 1 例に,ALS 発症後 5 年の時点で,4 つの微小電極アレイを左腹側中心前回に外科的に埋め込んだ.これらのアレイは 256 個の皮質内電極から神経活動を記録した.用意された文章と,構造化されていない会話文の両方について,この男性が発話を意図したときの,皮質神経活動の解読(デコーディング)結果を報告する.デコードした単語は画面上に表示されたあと,この男性の ALS 発症前の声に似た音声を設定したテキスト読み上げソフトウェアで音声として生成された.

結 果

使用初日(術後 25 日)に,神経補綴装置は 50 語の語彙を使用して 99.6%の精度を達成した.神経補綴装置の較正には,発話意図時の 30 分間の皮質記録と,その後の処理を要した.2 日目に,さらに 1.4 時間のシステム訓練を行うと,神経補綴装置は 125,000 語の語彙を使用して 90.2%の精度を達成した.さらなる訓練データにより,神経補綴装置は外科的埋込み後 8.4 ヵ月にわたり 97.5%の精度を維持し,男性はこの神経補綴装置を用いて,1 分間に約 32 語という自分のペースでの会話で,累積時間 248 時間超のコミュニケーションを行った.

結 論

ALS と重度の構音障害を有する 1 例で,発話のための皮質内神経補綴装置は,短時間の訓練後に,会話コミュニケーション回復に匹敵するレベルの性能に達した.(米国保健問題担当国防次官補室ほかから研究助成を受けた.BrainGate2 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00912041)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2024; 391 : 609 - 18. )