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August 22, 2024 Vol. 391 No. 8

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外傷性脳損傷患者に対する非制限的輸血戦略と制限的輸血戦略との比較
Liberal or Restrictive Transfusion Strategy in Patients with Traumatic Brain Injury

A.F. Turgeon and Others

背景

外傷性脳損傷を受傷した重症患者に非制限的輸血戦略を用いた場合の転帰に対する効果が,制限的輸血戦略と比較してどうかは明らかでない.

方 法

中等症~重症の外傷性脳損傷と貧血を有する成人を,赤血球輸血に非制限的戦略(ヘモグロビン値 10 g/dL 以下で輸血開始)を用いる群と,制限的戦略(ヘモグロビン値 7 g/dL 以下で輸血開始)を用いる群に無作為に割り付けた.主要転帰は転帰不良とし,6 ヵ月の時点での拡張グラスゴー転帰尺度(GOS-E)のスコアで評価した.各患者のベースライン時の予後に連動させた二分法(sliding dichotomy)により,スコアを転帰良好と転帰不良に分類した.副次的転帰は,6 ヵ月の時点での死亡,機能的自立度,QOL,抑うつなどとした.

結 果

742 例が無作為化され,各群に 371 例が割り付けられた.主要転帰の解析対象は 722 例であった.集中治療室でのヘモグロビン値の中央値は,非制限的戦略に割り付けられた患者では 10.8 g/dL であり,制限的戦略に割り付けられた患者では 8.8 g/dL であった.転帰不良となったのは,非制限的戦略群 364 例中 249 例(68.4%),制限的戦略群 358 例中 263 例(73.5%)であった(補正後の絶対差は,制限的戦略 対 非制限的戦略で 5.4 パーセントポイント,95%信頼区間 -2.9~13.7).生存例では,非制限的戦略は,機能的自立度と QOL を評価する尺度の一部のスコアが高いことと関連したが,すべての尺度ではなかった.輸血戦略と,死亡または抑うつとのあいだに関連は認められなかった.各群の 8.4%に静脈血栓塞栓症イベントが発生し,非制限的戦略群の 3.3%と制限的戦略群の 0.8%が急性呼吸促迫症候群を発症した.

結 論

外傷性脳損傷と貧血を有する重症患者において,非制限的輸血戦略は,6 ヵ月の時点での神経学的転帰不良のリスクを減少させなかった.(カナダ保健研究機構ほかから研究助成を受けた.HEMOTION 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03260478)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2024; 391 : 722 - 35. )