March 13, 2025 Vol. 392 No. 11
乳癌に対する腋窩手術 ― INSEMA 試験の主要解析の結果
Axillary Surgery in Breast Cancer — Primary Results of the INSEMA Trial
T. Reimer and Others
乳房温存療法の一環として行われる外科的腋窩病期診断を,生存に影響を及ぼすことなく省略できるかは依然として明らかでない.
前向き無作為化非劣性試験を行い,臨床的リンパ節転移陰性,病期 T1 または T2(腫瘍径 5 cm 以下)の浸潤性乳癌に対して,乳房温存手術を受ける予定の患者を対象に,腋窩手術を省略した場合と,センチネルリンパ節生検を行った場合とを比較検討した.この論文では,無浸潤疾患生存(主要有効性転帰)の per-protocol 解析の結果を報告する.腋窩手術省略の非劣性は,5 年無浸潤疾患生存率が 85%以上で,浸潤疾患または死亡のハザード比の信頼区間の上限が 1.271 を下回る場合に示されることとした.
適格患者 5,502 例(90%が臨床病期 T1,79%が病理学的病期 T1)が,1:4 の割合で無作為化された.per-protocol 集団は 4,858 例で,内訳は腋窩手術を行わない治療(手術省略群)が 962 例,センチネルリンパ節生検(手術施行群)が 3,896 例であった.追跡期間中央値は 73.6 ヵ月であった.5 年無浸潤疾患生存率の推定値は,手術省略群で 91.9%(95%信頼区間 [CI] 89.9~93.5),手術施行群で 91.7%(95% CI 90.8~92.6)であり,ハザード比は 0.91(95% CI 0.73~1.14)で,事前に規定した非劣性マージンを下回った.初回主要転帰イベント(浸潤疾患の発生・再発または全死因死亡)は 525 例(10.8%)に発生した.その解析では,手術省略群と手術施行群とのあいだで,腋窩再発率(1.0% 対 0.3%)と死亡率(1.4% 対 2.4%)に見かけ上差が示された.安全性解析では,手術省略群の患者は,センチネルリンパ節生検を受けた患者よりも,リンパ浮腫の発現率が低く,上肢の可動性が大きく,上肢・肩の運動に伴う疼痛が少ないことが示されている.
臨床的リンパ節転移陰性,病期 T1 または T2 の浸潤性乳癌患者(90%が臨床病期 T1,79%が病理学的病期 T1)を対象としたこの試験では,追跡期間中央値 6 年の時点で,外科的腋窩病期診断を省略した場合,センチネルリンパ節生検を行った場合に対して非劣性であった.(ドイツがん支援協会から研究助成を受けた.INSEMA 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02466737)