March 27, 2025 Vol. 392 No. 12
進行乳癌に対するイムルネストラントとアベマシクリブの併用とイムルネストラント単剤との比較
Imlunestrant with or without Abemaciclib in Advanced Breast Cancer
K.L. Jhaveri and Others
イムルネストラント(imlunestrant)は,次世代の血液脳関門通過性経口選択的エストロゲン受容体(ER)分解薬であり,ERαをコードする遺伝子(ESR1)に変異を有する癌に対してさえ,持続的な ER 阻害作用をもたらす.
第 3 相非盲検試験で,ER 陽性ヒト上皮増殖因子受容体 2(HER2)陰性進行乳癌を有し,アロマターゼ阻害薬単剤またはアロマターゼ阻害薬+サイクリン依存性キナーゼ 4 および 6(CDK4/6)阻害薬による治療中または治療後に再発または進行した患者を組み入れた.患者を,イムルネストラントを投与する群,標準的な内分泌単剤療法を行う群,イムルネストラントとアベマシクリブを投与する群に 1:1:1 の割合で割り付けた.主要評価項目は試験担当医師が評価する無増悪生存期間とし,ESR1 変異陽性患者,および患者全例においてイムルネストラントと標準療法とを比較し,同時期に無作為化された患者全例において,イムルネストラント+アベマシクリブとイムルネストラント単剤とを比較した.
全体で 874 例が無作為化され,331 例がイムルネストラント群,330 例が標準療法群,213 例がイムルネストラント+アベマシクリブ群に割り付けられた.ESR1 変異陽性の 256 例における無増悪生存期間の中央値は,イムルネストラント群で 5.5 ヵ月,標準療法群で 3.8 ヵ月であった.19.4 ヵ月の時点での制限付き平均生存時間の推定値は,イムルネストラント群で 7.9 ヵ月(95%信頼区間 [CI] 6.8~9.1),標準療法群で 5.4 ヵ月(95% CI 4.6~6.2)であった(差 2.6 ヵ月,95% CI 1.2~3.9,P<0.001).集団全体における無増悪生存期間の中央値は,イムルネストラント群で 5.6 ヵ月,標準療法群で 5.5 ヵ月であった(進行または死亡のハザード比 0.87,95% CI 0.72~1.04,P=0.12).イムルネストラント+アベマシクリブとイムルネストラント単剤との比較では,各群 213 例,計 426 例における無増悪生存期間の中央値は,それぞれ 9.4 ヵ月と 5.5 ヵ月であった(ハザード比 0.57,95% CI 0.44~0.73,P<0.001).グレード 3 以上の有害事象の発現率は,イムルネストラント単剤群で 17.1%,標準療法群で 20.7%,イムルネストラント+アベマシクリブ群で 48.6%であった.
ER 陽性 HER2 陰性進行乳癌患者のうち,ESR1 変異陽性例では,イムルネストラントの投与により,標準療法と比較して無増悪生存期間が有意に延長したが,集団全体では有意には延長しなかった.イムルネストラント+アベマシクリブは,イムルネストラント単剤と比較して,ESR1 変異の有無にかかわらず,無増悪生存期間を有意に延長した.(イーライリリー社から研究助成を受けた.EMBER-3 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04975308)