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April 10, 2025 Vol. 392 No. 14

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前立腺癌スクリーニングにおける多遺伝子リスクスコアの評価
Assessment of a Polygenic Risk Score in Screening for Prostate Cancer

J.K. McHugh and Others

背景

前立腺癌の発生率は上昇している.前立腺特異抗原(PSA)検査によるスクリーニングは,偽陽性率が高い.前立腺癌の人で頻度の高い生殖細胞系列バリアントがゲノムワイド関連解析により同定され,これを用いることで,前立腺癌のリスクに関連する多遺伝子リスクスコアの算出が可能になった.

方 法

英国のプライマリケア施設から,55~69 歳の人を登録した.唾液から抽出した生殖細胞系列 DNA を用いて,前立腺癌リスクの上昇と関連することが知られている 130 個のバリアントから,多遺伝子リスクスコアを算出した.多遺伝子リスクスコアが 90 パーセンタイル以上の参加者には,PSA 値にかかわらず,マルチパラメトリック MRI と経会陰生検による,前立腺癌スクリーニングの受診を勧めた.

結 果

参加を依頼された 40,292 人のうち,8,953 人(22.2%)が参加に関心を示し,6,393 人の多遺伝子リスクスコアが算出された.このうち 745 人(11.7%)の多遺伝子リスクスコアが 90 パーセンタイル以上であり,スクリーニングの受診を勧められた.この 745 人のうち,468 人(62.8%)が MRI と前立腺生検を受けた.うち 187 人(40.0%)で前立腺癌が発見された.診断時年齢の中央値は 64 歳(範囲 57~73 歳)であった.癌を有する 187 人のうち,103 人(55.1%)は,2024 年の全米総合がんネットワーク(NCCN)基準を用いると中リスク以上に分類される前立腺癌であったため,治療の適応となった.この 103 人のうち,74 人(71.8%)は,英国で現在用いられている前立腺癌の診断パス(PSA 高値および MRI 陽性)を用いると,癌は発見されなかったと考えられる.さらに,癌を有する 187 人のうち 40 人(21.4%)の病変は,NCCN 基準を用いると,好ましくない中リスク,または高・超高リスクに分類された.

結 論

多遺伝子リスクスコアで判定したリスクが上位 10 パーセンタイルの参加者を対象に検査を行う前立腺癌スクリーニングプログラムでは,臨床的に重要な前立腺癌を有することが判明した割合は,PSA 値または MRI で同定されたであろう割合よりも高かった.(欧州研究会議第 7 フレームワークプログラムほかから研究助成を受けた.BARCODE1 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03857477)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2025; 392 : 1406 - 17. )