April 10, 2025 Vol. 392 No. 14
経カテーテル大動脈弁移植術を受ける患者に対するダパグリフロジン
Dapagliflozin in Patients Undergoing Transcatheter Aortic-Valve Implantation
S. Raposeiras-Roubin and Others
ナトリウム–グルコース共輸送体 2(SGLT2)阻害薬は,心不全による入院リスクが高い患者のリスクを低下させる.しかし,重症心臓弁膜症患者の大部分や,経カテーテル大動脈弁移植術(TAVI)を受ける高齢者は,無作為化試験から除外されている.
スペインで,TAVI を受ける大動脈弁狭窄症患者を対象に,ダパグリフロジン(10 mg を 1 日 1 回)の有効性を,標準治療単独と比較評価する無作為化比較試験を行った.全例が心不全の既往と,腎不全,糖尿病,左室収縮機能障害のうち 1 つ以上を有していた.主要転帰は,追跡 1 年の時点での全死因死亡または心不全の悪化の複合とし,心不全の悪化は,入院または緊急受診と定義した.
TAVI 施行後,620 例がダパグリフロジンの投与を受ける群,637 例が標準治療のみを受ける群に無作為に割り付けられた.除外後,主要解析の対象は 1,222 例であった.主要転帰イベントは,ダパグリフロジン群では 91 例(15.0%),標準治療群では 124 例(20.1%)に発生した(ハザード比 0.72,95%信頼区間 [CI] 0.55~0.95,P=0.02).全死因死亡は,ダパグリフロジン群では 47 例(7.8%),標準治療群では 55 例(8.9%)に発生した(ハザード比 0.87,95% CI 0.59~1.28).心不全の悪化は,それぞれ 9.4%と 14.4%に発生した(サブハザード比 0.63,95% CI 0.45~0.88).ダパグリフロジン群では,性器感染症と低血圧の頻度が有意に高かった.
大動脈弁狭窄症を有し,TAVI を受ける心不全イベントリスクが高い高齢者のうち,ダパグリフロジンを投与した患者では,標準治療のみを行った患者と比較して,全死因死亡または心不全の悪化の発生率が有意に低くなった.(カルロス 3 世保健研究所ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04696185)