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April 24, 2025 Vol. 392 No. 16

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インフルエンザ伝播予防におけるバロキサビル治療の有効性
Efficacy of Baloxavir Treatment in Preventing Transmission of Influenza

A.S. Monto and Others

背景

バロキサビル マルボキシル(バロキサビル)は,インフルエンザウイルスの排出を急速に減少させることから,ウイルスの伝播を減らす可能性があることが示唆されている.ノイラミニダーゼ阻害薬による治療の試験では,ノイラミニダーゼ阻害薬によって接触者への伝播が予防されるというエビデンスは十分に示されていない.

方 法

国際共同第 3b 相試験を行い,発端患者から家庭内接触者へのインフルエンザ伝播の減少に対する,バロキサビルの単回投与による治療の有効性を評価した.5~64 歳のインフルエンザ陽性の発端患者を,発症後 48 時間以内に,バロキサビルを投与する群とプラセボを投与する群に 1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要評価項目は,5 日目までに発端患者から家庭内接触者にインフルエンザウイルスが伝播することとした.第 1 の副次的評価項目は,5 日目までにインフルエンザウイルスが伝播し,発症することとした.

結 果

2019~24 年のインフルエンザシーズンに,全体で発端患者 1,457 例と家庭内接触者 2,681 例が登録され,発端患者の 726 例がバロキサビル群,731 例がプラセボ群に割り付けられた.5 日目までに,検査で確認されたインフルエンザの伝播は,バロキサビル群のほうがプラセボ群よりも有意に少なく(補正後の発生率 9.5% 対 13.4%,補正後のオッズ比 0.68,95.38%信頼区間 [CI] 0.50~0.93,P=0.01),補正後の相対リスク減少率は 29%(95.38% CI 12~45)であった.5 日目までの,発症にいたったインフルエンザウイルス伝播の補正後の発生率は,バロキサビル群 5.8%,プラセボ群 7.6%であったが,その差は有意ではなかった(補正後のオッズ比 0.75,95.38% CI 0.50~1.12,P=0.16).追跡期間中に,バロキサビル群の発端患者の 7.2%(95% CI 4.1~11.6)に薬剤耐性ウイルスが出現したが,その家庭内接触者に耐性ウイルスは検出されなかった.新たな安全性シグナルは確認されなかった.

結 論

発端患者にバロキサビルの単回経口投与による治療を行った場合,濃厚接触者へのインフルエンザウイルス伝播率は,プラセボを投与した場合よりも低くなった.(エフ・ホフマン・ラ・ロシュ社ほかから研究助成を受けた.CENTERSTONE 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03969212)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2025; 392 : 1582 - 93. )