経カテーテル大動脈弁留置術時のルーチンの脳塞栓防止
Routine Cerebral Embolic Protection during Transcatheter Aortic-Valve Implantation
R.K. Kharbanda and Others
経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)の合併症として,手技に関連した脳卒中がある.脳塞栓防止(CEP)デバイスにより,脳循環への塞栓形成が減少し,脳卒中の発生率が低下する可能性がある.
英国の 33 施設で無作為化比較試験を行った.大動脈弁狭窄症患者 7,635 例を,CEP デバイスを用いて TAVI を行う群(CEP 群)と,CEP デバイスを用いずに TAVI を行う群(対照群)に 1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要転帰は,TAVI 後 72 時間以内,または退院まで(退院のほうが早い場合)に発生した脳卒中とした.
3,815 例が CEP 群,3,820 例が対照群に割り付けられた.主要転帰イベントは,CEP 群では 3,795 例中 81 例(2.1%),対照群では 3,799 例中 82 例(2.2%)に発生した(差 -0.02 パーセントポイント,95%信頼区間 -0.68~0.63,P=0.94).障害を伴う脳卒中は,CEP 群では 47 例(1.2%),対照群では 53 例(1.4%)に発生した.死亡は,CEP 群では 29 例(0.8%),対照群では 26 例(0.7%)に発生した.アクセス部位の合併症全体の発現率は,2 群で同程度と思われた(退院までの発現率:CEP 群 8.1%,対照群 7.7%).重篤な有害事象は,CEP 群では 3,798 例中 22 例(0.6%)に 24 件発現し,対照群では 3,803 例中 13 例(0.3%)に 13 件発現した.
TAVI を受ける参加者において,CEP をルーチンに使用しても,72 時間以内の脳卒中の発生率は低下しなかった.(英国心臓財団,ボストン・サイエンティフィック社から研究助成を受けた.BHF PROTECT-TAVI 試験:ISRCTN 登録番号 ISRCTN16665769)