January 23, 2025 Vol. 392 No. 4
食道癌に対する周術期化学療法と術前化学放射線療法との比較
Perioperative Chemotherapy or Preoperative Chemoradiotherapy in Esophageal Cancer
J. Hoeppner and Others
切除可能な局所進行食道腺癌に対する,最良の集学的アプローチは不明である.重要な問題は,術前化学放射線療法よりも,周術期化学療法を選択すべきかどうかである.
第 3 相多施設共同無作為化試験を行い,切除可能な食道腺癌患者を,FLOT(フルオロウラシル+ロイコボリン+オキサリプラチン+ドセタキセル)による周術期化学療法と手術を行う群と,術前化学放射線療法(41.4 Gy の放射線照射とカルボプラチン+パクリタキセル)と手術を行う群に,1:1 の割合で割り付けた.適格基準は,臨床病期が cT1 cN+,cT2–4a cN+,cT2–4a cN0 のいずれかの原発腫瘍で(T は腫瘍の大きさと拡がり [値が高いほど進行していることを示す] を表し,N はリンパ節転移あり [N+] またはなし [N0] を表す),遠隔転移なし,などとした.主要評価項目は全生存とした.
2016 年 2 月~2020 年 4 月に,221 例が FLOT 群,217 例が術前化学放射線療法群に割り付けられた.追跡期間中央値 55 ヵ月の時点で,3 年全生存率は FLOT 群 57.4%(95%信頼区間 [CI] 50.1~64.0),術前化学放射線療法群 50.7%(95% CI 43.5~57.5)であった(死亡のハザード比 0.70,95% CI 0.53~0.92,P=0.01).3 年無増悪生存率は FLOT 群 51.6%(95% CI 44.3~58.4),術前化学放射線療法群 35.0%(95% CI 28.4~41.7)であった(病勢進行または死亡のハザード比 0.66,95% CI 0.51~0.85).割り付けられた治療を開始した患者において,グレード 3 以上の有害事象は,FLOT 群 207 例中 120 例(58.0%),術前化学放射線療法群 196 例中 98 例(50.0%)に発現した.重篤な有害事象は,FLOT 群 207 例中 98 例(47.3%),術前化学放射線療法群 196 例中 82 例(41.8%)に発現した.術後 90 日の死亡率はFLOT 群 3.1%,術前化学放射線療法群 5.6%であった.
切除可能な食道腺癌患者において,FLOT による周術期化学療法により,術前化学放射線療法と比較して生存率が改善した.(ドイツ研究振興協会から研究助成を受けた.ESOPEC 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02509286)