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January 30, 2025 Vol. 392 No. 5

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左室駆出率の保たれた心不全と肥満に対するチルゼパチド
Tirzepatide for Heart Failure with Preserved Ejection Fraction and Obesity

M. Packer and Others

背景

肥満は,左室駆出率の保たれた心不全のリスクを高める.チルゼパチドは,グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)受容体とグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体の長時間作用型作動薬であり,大幅な体重減少をもたらすが,心血管転帰への影響に関するデータは少ない.

方 法

国際共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験を行い,心不全を有し,左室駆出率 50%以上,体格指数(BMI;体重 [kg]/身長[m]2)30 以上の患者 731 例を,チルゼパチド(最大 15 mg を週 1 回皮下投与)を 52 週間以上投与する群と,プラセボを投与する群に 1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要評価項目は,臨床イベント委員会に判定された心血管系の原因による死亡または心不全悪化イベントの複合(生存時間 [time-to-first-event] 解析で評価)と,カンザスシティ心筋症質問票・臨床サマリースコア(KCCQ-CSS;0~100 で,値が高いほど QOL が良好であることを示す)のベースラインから 52 週までの変化量の 2 つとした.

結 果

364 例がチルゼパチド群,367 例がプラセボ群に割り付けられ,追跡期間中央値は 104 週であった.判定された心血管系の原因による死亡または心不全悪化イベントは,チルゼパチド群の 36 例(9.9%)と,プラセボ群の 56 例(15.3%)に発生した(ハザード比 0.62,95%信頼区間 [CI] 0.41~0.95,P=0.026).判定された心不全悪化イベントは,チルゼパチド群の 29 例(8.0%)と,プラセボ群の 52 例(14.2%)に発生し(ハザード比 0.54,95% CI 0.34~0.85),判定された心血管系の原因による死亡は,それぞれ 8 例(2.2%)と 5 例(1.4%)に発生した(ハザード比 1.58,95% CI 0.52~4.83).52 週の時点で,KCCQ-CSS の変化量の平均(±SD)は,チルゼパチド群では 19.5±1.2 であったのに対し,プラセボ群では 12.7±1.3 であった(群間差 6.9,95% CI 3.3~10.6,P<0.001).試験薬の中止にいたった有害事象(主に消化器症状)は,チルゼパチド群の 23 例(6.3%)とプラセボ群の 5 例(1.4%)に発現した.

結 論

左室駆出率の保たれた心不全と肥満を有する患者において,チルゼパチドは,プラセボと比較して,心血管系の原因による死亡または心不全悪化の複合のリスクを低減させ,健康状態を改善した.(イーライリリー社から研究助成を受けた.SUMMIT 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04847557)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2025; 392 : 427 - 37. )